鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 先進治療科学専攻 外科学講座 消化器外科学
閉じる
▲TOPページへ


閉じる
ゲカイチでは他県で外科医として活躍され、鹿児島へ戻ろうと考えられている先生方に、留学や博士号などのご要望について、医局長が直接ご相談にのっています。
>>メールで相談する

巻頭言

巻頭言

2024年巻頭言

若者は何をみているのか?

教授 大塚隆生
専門臓器:消化器外科(胆膵外科)
 医学生や研修医は何をみて自分の進む診療科を決めているのであろうか?少なくとも外科に関しては教授ではないことを、全国の外科教室の教授は知っている。昨今の外科系教授職は忙しいばかりで収入も少ないことは周知の通りで、若者がなりたいと思わないのも当然であろう。では何をみているのか?恐らく歳の近い先輩が楽しそうにしているか、充実した私生活を送っているか、十分な収入を得ているか、といったことを見ているのであろうと思う。昨年2023年には7名の後期研修医が第一外科に入局してくれたが、勧誘の最中に医局別の「後期研修医収入番付」なるものが学生や研修医の間に出回っていることが判明した。しかも第一外科が西の幕尻(最低収入)である。各医局への入局者情報が続々と伝わってくる中、第一外科では誰も入局宣言をしておらず、後期研修医が外勤や余暇の時間を十分に取ることができるシフトを組むことを、危機感を持ったスタッフが真剣に考えもした。しかし、実際には全員がタイミングを見計らっていただけで、ファーストペンギンが出たら一気に7名が入局宣言をしてくれた。話を聞くと皆給与云々ではなく、若い先輩外科医とのコミュニケーションの中から外科の魅力を感じて入局を決めてくれたとのこと。さらに今年も新たに7名の後期研修医が第一外科に入局してくれる。第一外科の教室運営のテーマである「地域に信頼され、若者が活躍できる教室づくり」が少しずつ実を結んできた結果であるとともに、こういった若者たちがいる限り日本の外科医療だけでなく、鹿児島の地域医療も大丈夫であろうと頼もしく思った。

 昨年末にNPOアームスかごしまが企画した研究会のあと、厚生労働省医務技監(医系技官のトップ)と話しをする機会を得た。地方公立高校から東大医学部を卒業し、外科医を経て厚生労働省に入省したエリート中のエリートながら、大変気骨ある方だった。エピソードとして、麻酔の診療報酬加増に伴いフリーランス麻酔医が増えたことを受け、麻酔科学会役員に「国民の税金で医師にしてもらったのに、己の利のために麻酔を利用するとは何たる所業。そのために麻酔料を上げたのではない。」(おおよその主旨で、文言は正確ではないが)と大喝を加えたことがあるらしい。また外科医出身らしく、働き方改革が良い外科医を育成するためにそぐわないシステムであることを見抜いており、少なくとも優秀な外科医のやる気を削ぐことをしないように諭された。全く同感である。こういった方が日本の舵取りをしてくれる間は日本人の矜持が守られる。働き方改革は無駄を省くシステムであると考え、やる気のある外科医が十分に活躍できる環境を整えていきたいと思う。

 同じくNPOアームスかごしま企画の研究会のあとに麻生泰氏(麻生太郎元首相の実弟)の話も間近で聞くことができた。医務技監の剛に対し、麻生氏は柔といった趣である。麻生氏は株式会社麻生の会長で日本経済界の重鎮であるが、初期研修医の勤務先として全国的人気を誇る麻生飯塚病院を現在の形に育てた方でもある。そのテーマは「日本一のまごころ病院づくり」、「明るい病院づくり」である。第一外科でも癌と闘う患者と日々真摯に向き合わなければならないが、だからこそ患者と医療従事者双方にとって厳しい中にも楽しく、思いやりのある職場を作っていくことが、今の時代にこそ必要なのかもしれない。本物の医療は従事する者に利他の心が無ければ成立しないが、そのモチベーションを維持するうえでも、pricelessな真心、明るさは医療現場に普遍的に必要なものであろう。後日麻生氏から直筆の手紙と著書までいただき大変恐縮したが、こういった心配りもリーダーに必要な資質なのであろうと改めて感じた。

 今年は2名の若手教室員が米国留学へ向かう。コロナ禍でしばらく中断していたこともあり、久しぶりの海外留学派遣である。思い返せば25年前に先輩に海外学会に連れて行ってもらい、そこで楽しそうに外国人とコミュニケーションをとる先輩を見て、ああなりたいと憧れて私も海外留学を希望するようになった。昨年は鹿児島に赴任して初めて米国での国際学会に参加し、私の米国の友人との食事に留学予定の教室員を連れていくこともできた。場所は奇しくも私が初めて国際学会に連れて行ってもらったサンデイエゴである。教室員が今回の同行をどう感じたかを聞いていないが、楽しく充実した留学生活を送り、その経験を是非後輩に伝えていってもらいたい。



辰年にちなんで龍門滝(大塚の実家近く・加治木)

鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 先進治療科学専攻 外科学講座 消化器外科学

TOPページへ


ページの先頭へ戻る

ページの先頭へ戻る