鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 先進治療科学専攻 外科学講座 消化器外科学
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ゲカイチ

Vol.94

ー きっかけ。 ー






ピーポーピーポー…。



 たくさんの書類を処理して、研究室からやっと解放。
帰りのバスを待っていると遠くで救急車のサイレンが聞こえる。こういう時、
「運ばれてる患者さんはどうしたのだろう?」
「バイタルは大丈夫か?」
「どんな処置が必要か?」
なんて、患者さんの状態が非常に気になるようになったのは、いつからだろう。






 

…がんばれ…がんばれ!







うん。がんばれ、がんばれ!







え?







声出てたよ。
がんばれ!って思っちゃうよね。(笑)







吉能先生もですか!
救急医療じゃないですけど、
子どものころドラマでよく見るシーンにドキドキしてました。

ほら、患者さんの容態が変わってすぐ手術!なんて…







あ〜『ドクターX』とかでよくあるよね…。
まぁ、実際はほとんどないけどね。







 

 『患者の容態が急変。周囲の反対を押し切って手術を行い、見事成功』。
ドラマの世界ではよく見るシーン。しかし、ことはそうシンプルにはいかない。

 第一に検査。全身の診察、血液検査、レントゲン、CT、MRI…
手術前にはさまざまな検査で正確な診断が必要になるが、当日の検査の予約枠はすでに埋まっていることがほとんど。
 検査部署に緊急検査を伝えたら、割り込みスケジュールの調整。
そして検査が受けられなくなった患者さんへの謝罪に、次の検査の予約調整。

 そして、手術が必要な患者さんの場合、手術室との交渉。
「その日手術を受けなければならない患者」はたくさんいるから、手術室は埋まっている。

 さらに看護師や麻酔科医の手術に関わるスタッフの手配・調整も…。
ほとんどの場合一人で手術はできないから、チームとなる医者の手配をするにも、他の外科医たちは他の業務で大忙し。その手を止めて「なぜ、今手術が必要なのか」を必死にプレゼンして、手術の協力をお願いする。

 さらに重要なのが、家族への連絡。
こういうシーンでは、患者自身の意識がないことが多いから、まずは家族に連絡して容態急変を伝え、場合によっては来院をお願いする。

 この時点で、相当な時間とパワーがかかることは想像しやすいだろう。
つまり、『今すぐ緊急手術!』といっても、さまざまなハードルをクリアせねばならず、かなり骨が折れる…。というわけだ。






 

今、リアルに想像してたでしょ(笑)






あ、吉梅先生…。






まぁ…どんな先生も、
担当する患者さんのためにベストを尽くしているからね。
ちょっとありえないかな(笑)






たしかに…。
あと、手術室を上から見下ろす部屋!
医学部に入る時は、いつかあの部屋から見下ろされるくらいの名医になるんだ!
って思ってました






あはは。あれね…。
昔はあったけど今はないね(笑)






そうだね東川先生。
手術中の細かい手技は、近くでないと見えないからね。






実際は手術室で踏み台とかに乗って、
術者の後ろから覗き込むよね。






…それだと…あまり絵にならないですね…。






今なら、カメラで撮影してモニターに映し出しているよね。
遠い場所でもよく見れるから。






あー…。
『メス!』とかかっこよく言って、
見ずに受け取ったりも実際にはしませんね(笑)






危ないもの(笑)








 

 メスは、皮膚が抵抗なくパックリ切れる危険な道具だ。
お互い目視でしっかり確認しながら、
慎重に「メスください」「渡します」「返します」などの声掛けで、
スタッフが怪我をする危険を防いでいる。
つまり、これもありえないシーンだ。








 

初めて実際の手術を見た時は
『思ったより平和でリラックスしてるんだなぁ』って。
落ち着いた柔らかい空気を感じました。






そりゃあね。過度に緊張して力んだ状態より、
リラックスできる状態で淡々と行うほうが
安心して仕事ができるもの(笑)






だけど、その雰囲気が『ドラマよりかっこいい!』と思いました。






それは良かった(笑)






なんか、こうやって医療の現場に入ると、
ありえないシーンが気になってきますね(笑)。
先生たちはどんなドラマ見てました?






僕は漫画『Dr.コトー診療所』かな。
手術シーンが多い医療漫画が多い中で、そうか、こういう医者の生き方や考え方は大事だな。
って思った。

患者さんのQOLを大事に考えるところとか、
一人一人の患者さんに向き合おうという姿勢もかっこいいよね。






僕は鹿児島大学出身の外科医、
中山祐次郎先生が書いた小説『泣くな研修医シリーズ』かな。

経験者の真実味と、鹿児島大学出身の親近感もあって、朴訥で勤勉な研修医のキャラクターが読み手の感情にダイレクトに訴えてくるよ。
アニメ化にドラマ化。 地元新聞にも作者のコラムが連載されているって知ってた?






新人医者が描かれてるものなら、僕は漫画『ブラックジャックによろしく』ですね。オーバーな描写もあるけど、主人公の苦悩の描写にグッと入り込んじゃいます。
手塚治虫の『ブラック・ジャック』をもじったタイトルも 洒落が効いてて思わず手に取っちゃいますよね!






うん!永遠の名作漫画『ブラック・ジャック』は定番!
孤独でダークヒーローの天才医者に思われるけど、
そのまっすぐで複雑な正義がなんとも言えないんだよなぁ。

僕も医者になってかっこいいセリフを決めてみたかったよ。
出てくる症例は突拍子も無いのが多いけど、
僕みたいに『医者という生き方』を意識した子供は多いんじゃないかな。






…そういうことなら、私はやっぱり『白い巨塔』ですね。
財前先生と里見先生のそれぞれの正義が激しくぶつかるストーリーに燃えます。さすがにあんなドロドロすぎる職場環境は嫌ですけどね(笑)。

医者になった今では、患者さんの事を第一に考えるバイブルです。
『医療に絶対はない。だから医者は悩み続けなければならん。』
って大河内教授の言葉は、我らがゲカイチ、須子井教授の言葉にも繋がるでしょう。






…半田先生…今、呼びましたか?






半田先生、教授も!一緒のタイミングなんて珍しいですね






医療ドラマや漫画の話ですか…そもそも実際の現場では、
『意識ははっきり。会話もできるが、血圧や脈拍、呼吸状態などに大きな異常』とか
『本人は『大丈夫だ』と言ってるのに、血液検査の値が大きく逸脱してて命の危険」』など、緊急事態は地味なものです。

 そもそも、入院している患者の容態が変わって、うめき声をあげて
意識混濁、周囲が大騒ぎ。というのもそうそうあることではありません。
ただそういった急変を見逃さないように、常にアンテナを張り、たくさんの目で見抜くことが非常に重要になります。






『白い巨塔』のように、
主義主張、出世欲で、スタッフを巻き込んで医局の人間関係がドロドロする。てこともあり得ないでしょう。
とくにゲカイチでは(笑)






その通り(笑)
みんな患者さんの治療と研究に一生懸命ですから。
私自身も、患者さんだけでなく、
ドクターのQOLも充実できるように環境を整えるのが、なによりの悦びですから。






教授は、医療ドラマや漫画は読まれるんですか?






う〜ん…『白い巨塔』くらいは、読み返したりしますけど、
医者を魔法使いのように描写しているドラマや漫画も多くて、
あまり熱中はできませんね…。

だから、スタッフがドラマやマンガの名言を言ってもわからないんですよ…






なるほど…






とは言え、1つの生き方として医者、特に外科医を選ぶきっかけになるということは非常に楽しみなことです。
私も未来の外科医のために、さらに良いゲカイチづくりで忙しくて…。






僕らもがんばらなきゃですね。






『医局は外国より遠い…大学病院とはそういう所だ…』

なんて思われたくないですからね。






それ…『ブラックジャックによろしく』の久米先生の名ゼリフ…






『どんな状況になろうと最後まで絶対に諦めない。それがゲカイチのチーム』

ですから。






あ、『医龍』の朝田龍太郎…








 

 教授はいたずらそうな目で僕らを見ながら、足早に駐車場へ向かっていった。









あ…教授…
『ワタシ、シッパイシマセンカラ!』
はおっしゃらないんだね…。

だけど、卓越した腕前と皆からの信頼で、
数々の苦難を乗り越えてきてるのはわかるよ…。






『僕らにできる事はひとつ…正面から向き合う…』
ですね…。






それ、
『ブラックジャックによろしく』

だね…?






はい…。








 

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