鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 先進治療科学専攻 外科学講座 消化器外科学
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ゲカイチ

Vol.83

ー 人の根本にあるもの ー

 

 


 あきれるばかりの入道雲とセミのシャウトも大人しくなり、
ここ鹿児島の南国の長い夏にも、なんとなく秋を感じて少しさみしくなってきたこのごろ。
 いろんな人のことを思い出しながら後輩と中庭を移動する。

 

 

 

 

 

 

 

 

しぇんぱ〜い。
それにしてもどうやったらモテるんですかね〜






 

どうしたの? 急に。








 

 

 

 

 

 

 

 鹿児島出身なのに、僕と話すときだけ、博多なまりを出してくる新入生の入秤くんは、
だいたい『モテ』に関する話で、ぼくの注意を引こうとする。

 とはいえ、れっきとしたモテエピソードのないぼくだから、
かわいい後輩に教えられるような『モテの秘訣』なんてあるわけもなく…。





 

口を開けばそんなことばかり…
せっかく地域枠で入学した念願の医学部なんだから、
もっと勉学に打ち込ん…






 

やだなぁ…しぇんぱい。『人にモテること』。
卒業後、しばらく地方医療に従事する、
地域枠で入学した僕だからこそ、これも大事な哲学の一つですよ。
今からちゃんと学んでおかなきゃ。です!






 

あ、あぁ。
確かに地域の人に信頼される医者を目指すことは重要だね。
うん…相変わらず意識高いね…






 

先輩が女性にモテることは、よく知っとうですけど、
何より僕は医者としてモテたいとです









 

 若干のイヤミを加えながら、先輩に教えを乞う。
なんて、高度なコミュニケーション能力に少しイラッとしながらいろいろ思い出す。







 

そうだなぁ…僕の知ってる『モテ』。
といえば…だんぜん大川先生かなぁ





 

大川先生…






 

うん、奄美大島は大島郡の大和村診療所にいる先生なんだけど…、
島民の人からすごく信頼されていたなぁ。

僕が「大川先生のとこに行く」っていうだけで、
すれ違う人のほとんどに
「先生によろしく。」なんて言われるくらいだからね。
>Vol.10『理想と現実』






 

おぉ、大川先生…。
かなりモテてますね…






 

そう…。
地域医療の従事には、
『人たらし』と『謙虚な気持ちで医療に貢献する』
…才能が必要なんです!






 

半田先生…いつの間に!






 

あぁ…。
思い出すなぁ…。黒山先生。
先生こそ地域医療に貢献して
地元の人達に愛された先生でした…






 

どんな先生なんですか?
お会いしたいです!






 

うん…。伊佐市の寺畑病院の院長で
精力的に活動されておられた先生だったのですが、
残念ながら先生は3年前にお亡くなりになられました…。

先生と親しかった、
出水郡医師会立第二病院院長、田鍋先生から、
いろんエピソードをお聞きしたことがあります。






 

…というと?






 

うん…僕も先生のお通夜で色々お話を聞かせてもらったんだけど…
なくなられた夜に院内で身内と職員だけのお別れ会が開かれたらしいんだ。

畳が敷き詰められた院内会議室に集まったのは150名の職員。
入りきれずに廊下にまであふれていたらしいです…。

何よりびっくりしたのは、当日流れたスライドでした…。
黒山先生がうれしそうな顔で、
稲刈りや牛の世話をする様子や鉱山に行ったり…、

会場が暑い地域イベントがあれば、
氷柱を自前で用意したり、冷たい飲み物を配ったり…。

そんな地域の人たちと、積極的に交流する場面がほとんど。
あぁ…ほんとうに地域の人たちを愛して、
そして愛されてたんだなぁ。って
それだけでなんだかグッときましたよ…






 

たしかにグッときますね…






 

人が喜びそうなことを思いついたらすぐに実行するタイプの先生でした…。
地域にとけ込む努力だけではありません。
職員全員参加の北海道旅行や大入袋を自腹で出したりしていたようで…。

お別れ会で、枕元でひとりひとりが交互に感謝の言葉を述べていたり…、
参列していた職員さんを見ていると、
いかに大切にされていたかがわかりますよね…。  

とはいえ、ただ奔放な病院運営をしていたわけでもないようです。
病院のロビーには、病院機能評価取得20年の顕彰が飾られています。
『地域に良質の医療提供』をという想いを、前院長からちゃんと引き継いで、
さらに発展させていたことに、先生も驚かれていました。






 

なるほど…。
オンもオフも全力だったんですね…







 

…黒山先生は、田鍋先生とともに県立大島病院で
合宿生活のように若い医師時代を過ごしていたと聞いてます。
その悲しみは深いものだったでしょう…。

そんな先生だったからこそ、
親しみを込めてみんなから「クロちゃん」
と呼ばれていたとお聞きしています。






 

教授…いつの間に!






 

あぁ…カンタンに、「モテたい」。なんて
言っていた自分が恥ずかしくなってきました…。






 

感動したのは火葬場へむかう霊柩車の話です。
途中、寺田病院を迂回したのですが、
たくさんの職員と病衣のままの患者さんたちが、
病院の玄関前に立って黙礼されていたらしいです…。






 

…それだけではなくて、
向かいの歩道では地域の方々が
何人もたたずんでおられていたらしいですね…






 

それはすごい…。スケールが違いますね…






 

桐野くんが会った、大島郡大和村診療所の大川先生も頑張っていますね。
以前、大和村診療所を訪問した際に、
「医療には地域を変える力がある」と
言っていたのを思い出しますよ…。

とはいえ、私たちには見せませんが、それなりに葛藤はあったはずです。
専門外の治療も多くて大変なこともありますが、
今では地域で自分が必要とされていることを
何より楽しんでいらっしゃいます。

地域医療の現場で学ぶことは、
医師の技術だけでなく、
医師としての心を育てるということなんだと思いますよ






 

その通り。
地域医療では知識や技術以外に
人間性も含めた、全人的医療を提供する必要があります。

入秤くんみたいに地域医療に積極的な人材を育成し、
地域医療を守ることがゲカイチの重要な責務ですからね。

ゲカイチの教室五訓…

『人格を磨く』

『医道を極める』

『社会に貢献する』

『後進を育成する』

『組織力を高める』

…は、
医療人・社会人として必要なエキスが詰まっていますよ。
ぜひ、みなさんの座右の銘にしてほしいと思っています。






 

あぁ…、

僕、急に自信がなくなってきました…






 

そう、難しく考えることはありませんよ。
たしかに医療のシステムは時代に合わせて変化しています。
とはいえ、人間社会の根本は変わりません。

地域住民に信頼と安心を提供するためには、
医療だけの知識だけでなく、
『仕事以外の人間関係』も積極的に築く習慣も大事でしょうね。






 

…ということは…。






 

…合コンも大事な勉強である。と…。








 

…ちょっと…う〜ん…かなり違うかな…



 






 

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