鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 先進治療科学専攻 外科学講座 消化器外科学
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ゲカイチ

Vol.81

ー 見えない壁。 ー

 

 

 

 

あー、ホントおなかすきましたー…






 

今日のゲカイチはホントにハードだった。

明日が休みだったら「おつかれさまのビールを一杯」と行きたいところだが、
明日もハードな予感。そうもいかない。






 

 

ほんとだね…。
ダイエット中だけど、なんだか今日はガッツリいきたいね。
凸瀬先生。





 

黒尾先生、それなら、ちょっといいところあるけどいく?
ご飯、漬物、みそ汁おかわり自由だよ?
どう?大倉先生?





 

いいね!






 

ということで、
帰りが一緒になった新入局の先生たちと近場の定食屋で夕食を。
ということになった。

家庭的なメニューで落ち着ける。と凸瀬先生のオススメの定食屋だ。




 

あれ?夕食どきというのに、思ったより人が少ないですね。
…というか、店内の様子ちょっと変ですよ?







 

それもそのはず、店内のテーブルは密にならないよう、
1席ごとに使用禁止の立て札がかかっている。

なによりも違和感を感じたのは、
テーブルの真ん中に置かれた「頑丈そうな透明の壁」だ。




 

飛沫感染防止用の配慮だね





 

この店まで…意識高いなぁ。
まぁ、僕らにとってはうれしい心遣いだよ。
安心して食事ができるね









 

それは、さながらアメリカの映画で見る、収監された受刑者と面会する時の透明の壁のようで…。

なるほど、確かにここまでの配慮があれば安心。
だけど、せっかくの食事の楽しさも半減するほどのそそり立つ高さ…。

とはいえ迫り来る食欲には勝てない。早々とテーブルに座り注文する。







 

緊急事態宣言全面解除。とはいえ、まだまだ影響は続いてますね…。





 

そりゃそうだよ。
新幹線も飛行機もバスも便数を減らして席はがらがら。
ゴールデンウィークの人の動きは例年の10%未満。というからね。
元に戻るまで時間はかかるだろうね





 

いまさらだけど、人の移動とともにウィルスは広がるからね。
オリンピック、プロ野球、高校総体、大相撲…

スポーツイベントだけじゃなく、
人が集まることが想定されるイベントはすべて中止だし、
ちょっと前まで、大型商業施設や遊技場…
飲食店も軒並み閉店だったからね。

 

不要不急がこんなに経済を支えていたなんて、想像しなかったなぁ…。





 

自粛自粛の連続で…映画でよく見る人類の世紀末…
いや、世界大戦を思わせる戦争中みたいだね





 

自粛…嫌いです…。
合コンも全部中止になりましたよ…







 

偶然、タイミングがあったとはいえ、せっかくのお二人との食事会だ。
暗い話題を吹き飛ばそうと自虐的な話題をふってみるが、
テーブルの向こう側に座っている先生たちと僕の間にあるのは
「頑丈そうな透明の壁」。

話がどうもやわらかくならない。






 

僕たち医療の分野だって、大変だよ。
毎日、県別の感染者数、死亡者数が発表されて、
県境を越境しないようにしてるし、
越境したら2週間の自宅待機という制限がされる。





 

まぁ、不要不急の外出は制限されてるけど、
食料や日常品などの、最低限の流通は確保されているから
思ったほどストレスは少ないけどね





 

とはいえ、人口が多い首都圏は本当に大変だよ。
比例してコロナウイルスの重症患者も多くなるから、
専用病床を持つ指定機関は、ほとんど患者さんが占拠してるし、
「新型コロナ患者にとって最後のとりで」の人工肺ECMOがたくさん稼働してる。

これまでは、
ECMOを専門としてやっていた人は30人ほどしかいなかったから、
全国から集めてなんとか治療に当たっている。
という状況らしいんだ





 

これまで日本ではECMOを導入する症例は、
恐らく1つの病院で年間に2例や3例しかなかったというし、
日本で使える装置は3、4種類。

それぞれの特徴やメリット・デメリットを理解し、
機械に慣れて、上手な管理ができるようにしなければならない。
そのうえ、新型コロナの治療以外でECMOが使われると、
コロナ患者に使えるECMOの台数は減っていく。全く頭がいたいよ…





 

24時間365日。
ECMOを扱える医師がつきっきりで治療に当たる必要があるしね…





 

マスクやガウン、フェースガード、
PPE(血液や湿性生体物質に触れる可能性がある際の個人用防護具)は
使い捨てで不足しがちですからね…。

いつ自分や家族も感染してしまうかわからない不安と危険…
最前線で治療にあたる先生方には、本当に頭がさがります…。









 

いつもなら、先生たちの話を聞くのは僕の楽しみの一つだが、深刻な話が続く。

さらにこの「頑丈そうな壁」。
食事中とはいえ、いやがおうでもコロナ影響下にあることを意識させられる…。






 

しかし!です!
それとは裏腹に、医療関係者への差別や中傷がされている…!
悲しいです!
医療崩壊瀬戸際で頑張っている彼らにはエールを送っていただきたい!





 

教授…!





 

失礼。僕も今仕事が終わったとこでね。
ご一緒していいかな。









 

教授の生姜焼き定食が運ばれてくると同時に、黒尾先生がご飯と漬物のおかわりを頼む。

いつもならセルフサービスらしいが、
今は店員さんが器を替えてまとめて持ってくるシステムだ。
ご飯と一緒にドンブリに盛られた漬物がドンと置かれる。
これも3密対策。というわけか。






 

鹿児島も、10名の感染者が出たけど、不幸中の幸い。
外からの持ち込みルートが判明しているし、重症化していない。
とはいえ敵は未知のウィルス。
いつ重症化してもおかしくない。油断大敵ですよ。





 

ウチの病院でも対策・シミュレーションして、
スタッフや患者さん間での感染が起きないように、
水際での防御態勢を構築してますね。





 

僕も帰ったらすぐに服を脱いで洗ってますよ




 

「透明の壁」の向こうで、ドンブリいっぱいの漬物をご飯と一緒に平らげると、ちょっとドヤ顔でそういった。








 

カンファレンスや回診、講義や講演会・研究会・学会が中止になっているけど、
webカンファレンスやネットを使った会議が急速に進んできています。
今は、働き方改革が叫ばれる時代です。
「人間万事塞翁が馬」。ピンチはチャンスでもあります。

これまで幾度となく人類は大きな試練に挑んできましたが、
そのつど英知の限りを尽くして乗り越えてきています。

 

これを機会に人とのつながり方が見直されれば、
医療界のパラダイムシフトも促進するはずです。
いい感じに世の中が変わってくれるといいんですが…。





 

早く、既存薬品での効果の証明、
ワクチンの開発が進んで終息して欲しいです。
そしたらこの透明の壁も無くなりますね…





 

ん?これ…?



 

こういう風に使うんですよ?






 

そういうと、テーブルの真ん中にそびえ立つ「頑丈そうな透明の壁」を
ヒョイと端に移動して隣のテーブルとの壁を作った。

つまりこの壁は、他のテーブル客との飛沫感染を防ぐツール。
というわけだ。




 

これが快適なソーシャルディスタンス。かな?






 

テーブルの上に一気に開放感が広がった。






 

あ…。なるほど…





 

ハードな勤務の後です。
今は大変な状況ですが、ゆっくり食事を楽しんで明日への活力にすること。

これも我々の使命ですよ。







 

 そういうと、教授は2回目のおかわりを注文した。






 

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