鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 先進治療科学専攻 外科学講座 消化器外科学
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ゲカイチ

Vol.75

ー 病棟エボリューション ー



 半田先生に呼ばれて手術室へと向かう。
 以前ならそんなに慌てなくても大丈夫だったのだが、
新病棟建設のための再開発整備により迂回路ができたこともあり、
手術室へと向かう足は以前よりちょっと急ぎ足になってしまう。

 迂回路の角を足早に曲がろうとしたその時、
向こうから角を曲がろうとしていた人たちと危うくぶつかりそうになった!





桐野

あ、東川先生!

す、すみません。大丈夫ですか?







桐野

あ〜、びっくりした。桐野くん、そんなに急いでどうしたの?







桐野

半田先生に呼ばれて手術室に向かっていたんですけど、
今、再開発整備中でちょっと遠くなってしまうので、
自然と早足になっちゃいました…。







桐野

そうか、
今はちょうど既存病棟の取り壊し工事だから、
手術室やICUへは迂回路になってるもんね。







桐野

白鷺先生もそう思います?

早く慣れなきゃいけないんですけど、
つい以前のような時間感覚で考えてしまって…。


桐野

それにしても、一体いつまで続くんでしょう…。
この建て替え工事…。










 鹿児島大学病院では、既存病棟が建築後40年以上経過し、
老朽化、狭隘化、高度先進医療のための対応、耐震問題などのため建て替え工事が続いている。

 新しい場所への移転ではなく、
現状の施設を残しながらの現地改修だから
すべての再開発整備が終わるまで、あとおよそ7年かかる計画になっている。






桐野

そう言えば、半田先生に呼ばれているって言ってたよね?







桐野

そうですけど…それがどうしたんですか?
寺園先生…。







桐野

実は僕たちも呼ばれているんだ。







桐野

えっ!そうなんですか!
じゃあ、ご一緒しても良いですか?







桐野

もちろん。







 3人のあとについて歩いていく。
なんだか、まるで以前から知っていたかのように、手術室までの最短ルートを通ってたどり着く。








桐野

もしかして…先生方は迂回路の最短ルートを知ってたんですか?







桐野

手術室やICUなどは、特に患者さんの急な容態の変化などがあるからね、
再開発整備が始まる前からしっかり調べておいたんだよ。







桐野

さすが…ですね〜。









 その時、後ろから大きなため息が聞こえた。








桐野

ハぁ…、桐野くん…

『さすがですね〜』じゃないだろう…







桐野

あっ、すみません。







桐野

ははははははは。
桐野くんはまだ慣れていないみたいですね。







桐野

まだ不便に感じることが多くて…。







桐野

そうですか。
まだ慣れていないから不便に感じることの方が多いかもしれませんけど、
この再開発整備はゲカイチにとっても必要な進化なんです。







桐野

進化ですか!







桐野

そうだよ!
この再開発整備は患者さんはもちろん、
我々医師やすべてのスタッフにとっても重要なことなんだよ。

桐野

長かった…。
ここまで来るまで、かなり苦労したんだ…。







桐野

半田先生はかなり、この計画に尽力しましたからね。
新入局を決めた先生方を含め、
医師たちの働きやすい、未来に向けての病院再開発なんですよ。







桐野

患者さんにとっても、
外来の受付・待合スペースを効率的に運営できる共用スペースを設けたり、
個々の病室も余裕を持たせたり、


桐野

患者さんだけでなく、付き添いの方々も、
病院で快適に過ごせる環境を整えられていますからね。







桐野

それに、我が大学病院は、災害拠点病院の指定を受けているから
『万が一の事態にも必要な医療を提供し、この地域を守る』
と言う大きな責任があります。


桐野

そのためにも、設備面と体制を整え、
救急医療の機能強化に努め続けなければいけません!







桐野

なるほど!







桐野

今は仮設だから動線が長くて大変だけど、
新棟ができた時には、いろいろ一気に解消される。
というわけです!


桐野

まさに21世紀をリードする病院!
あぁ…ほんとワクワクしてきます…







桐野

ホントです!
…新しい病棟…。仕事に張りも出ますね!







桐野

…そうですね!ワクワクしますね!







桐野

そう言えば…
新しくアメニティ棟っていう建物もできるんですよね?







桐野

アメニティ棟…?
どんな建物なんですか?







桐野

うん…、
新しく建築予定のアメニティ棟には、
食堂や売店はもちろんコーヒーショップや
本屋さんなどが入る予定になっています。







桐野

コーヒーショップ! 本屋さんもですか!







桐野

桐野くんが淹れてくれるコーヒーも捨てがたいですが、
コーヒーショップのおいしいコーヒーが手軽に飲めるのはうれしいですね!







桐野

他は何が入る予定なんですか?
コンビニですか…、それとも、有名レストラン?
いや、ここは思い切ってアウトレットモールとか!?







桐野

桐野くん…妄想が暴走しているよ…







桐野

ははははは。
夢が膨らんでいる時に申し訳ありませんが、
大学病院っていうことを忘れなく!







桐野

す、す、すみません。
どんな建物ができるのかの方にワクワクしてしまいました…







桐野

ははははは!ところで、半田先生!
みんな手術室に呼ばれてますが、何か用事があったんじゃないですか?







桐野

あっ!そうだった。
いや…、今の迂回路ならどのくらい時間がかかるのかちょっと調べていて…







桐野桐野桐野桐野

え〜っ!そのためだけに!







桐野

ん?言ってなかったっけ?

…ちなみにみんなどのくらいかかった?







桐野

時間なんて測ってないですよ〜。







桐野

じゃあ、桐野くんだけ、もう一度戻ってもらおうかな?







桐野

えっ!もう一回ですか?







桐野

寺園先生たちは最短ルートを調べていたみたいだから、
何も知らない人がどのくらいかかるか知りたくてね。







桐野

…なるほど…







桐野

準備はいい?







桐野

えっ!もうですか?









 その声が聞こえなかったのか、それとも聞こえないフリなのか…。
すでに腕時計を見つめている。






桐野

はい!よ〜い、スタート!






 日頃の条件反射なのか、半田先生の急な掛け声に思わず今来た道を慌てて戻り始める。





桐野

桐野く〜ん!ズルしちゃダメだよ〜。








 背後から聞こえる半田先生の声を背に、さっきのルートを思い出しながら歩く。


 時代は変わる。人も変わる。建物も変わる。
なるほど、医者としての技術や思いだけでなく、様々な要素が大事なんだ…。


21世紀をリードする病院…、
21世紀をリードするゲカイチ…。
21世紀の成長している僕。

想像すると…なんだか、力がみなぎってくる。

よし!まずは、半田先生が驚くタイムを出して進化中の僕を見せつけるんだ!







桐野

あ…桐野くん…。廊下は走らないようにね!








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