鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 先進治療科学専攻 外科学講座 消化器外科学
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Vol.70

ー 研究者への道 ー




 

 午後からの診療に必要な資料を両手に抱え、医局へと続く廊下を足早に歩いてたら、

下を向いて何かをつぶやきながら歩いていた「若手の有望株」田和先生(VOL.37参照)とぶつかりそうになる。





 

桐野

わぁ!すみません!

大丈夫ですか?








桐野

ごめん、ごめん。
大丈夫、大丈夫!桐野くんこそ大丈夫?








桐野

僕は全然大丈夫です!
何かつぶやきながら歩かれてましたけど、どうしたんですか?







桐野

うん、実は最近研究がなかなかうまく進まなくてね…。
次の打開策を考えていたところ。








桐野

そうなんですね。








桐野

基礎研究はうまくいかないことの方が多いから…ね。








桐野

ちなみに、今はどんな研究をされているんですか?








桐野

今取り組んでいるのは…
治療前の癌患者さんから小さな癌細胞を採取して特殊な環境で培養して、
実際の治療に使う薬剤を使って、
各個人の患者さんに『どれが一番効くか』を調査する研究。







桐野

すごいです。








桐野

癌細胞は患者さんによって性格も様々だから、薬の効果も違ってくるんだよ。


桐野

もちろん今までの治療成績から、
推奨される治療選択(治療ガイドライン)はあって、
それに則って治療方法を選択しているんだけど…


桐野

よりそれぞれの患者さんに最適な薬剤を選ぶことができれば
もっといい治療効果が期待できるんじゃないか?
と思っているんだけど…。


桐野

実際にやってみるとなかなか難しくて。








桐野

田和先生ほどの優秀な先生でも悩まれるんですね。








桐野

うふふ。桐野くんも口が上手になったね







桐野

い、いや、そんなつもりじゃ…。
ところで、研究と臨床で一番違う点って何なんですか?








桐野

うふふ。そうだね。一番って言われると難しいけど、
やっぱり直接目に見えるかどうかってところかな。







桐野

目に見えるかどうか…ですか?








桐野

臨床では…
例えば癌などの対象が目に見えているよね。
その対象を手術や化学療法にで小さくし、
最終的には完全になくなることが一番の目標になると思う。


桐野

それに、内視鏡やCTとか、複数の画像で
癌の大きさを評価することができる…。








桐野

はい。








桐野

だけど、研究では癌細胞を直接見るのではなく、
間接的に癌を大きくしている遺伝子やたんぱく質を調べて、
そこから癌の増殖、転移のメカニズムを調べることになるよね。








桐野

そうですね。








桐野

あと、研究は臨床に比べて、
結果が出るまで長い時間がかかるから、
研究には継続性と忍耐力が必要になると思うよ。







桐野

継続性と忍耐力ですか…。







桐野

そう。
(癌への免疫応答に重要な役割を果たす)PD-1受容体を発見した功績で、
ノーベル医学生理学賞を受賞された本庶佑先生も言ってたでしょ?







桐野

あの…本庶先生ですか?








桐野

そう。知らない?
本庶先生がいつもおっしゃっている『6つのC』。








桐野

…『6つのC』
…ですか?








桐野

『好奇心=Curiosity』を大切に、

『勇気=Courage』を持って、

『困難な問題に挑戦=Challenge』して、

桐野

『必ずできる。という確信=Confidence』を持って、

『全精力を集中=Concentration』させ、

『あきらめずに継続=Continuation』すれば…




桐野

「時代を変革するような研究を発信することができる」

って言葉。








桐野

好奇心(Curiosity)
勇気(Courage)
挑戦(Challenge)
確信(Confidence)
集中(Concentration)
継続(Continuation)

桐野

の、 『6つのC』ですか…。








桐野

基礎研究はうまくいかないことの方が多いし…

とても時間がかかるんだ。


桐野

でも…、

『もしかしたらこの研究が、将来治療に役に立つんじゃないか』
という期待を持って多くの研究者が日々研究に励んでいると思う。


桐野

そういう人たちにとって
今回の本庶先生のノーベル賞はとても励みになったはずだよ。








桐野

……そうですね!









桐野

あれ、桐野くん。
田和先生に相談?







 

 ちょうどその時、江良井教授が前を通りかかった。







 

桐野

はい!
田和先生に基礎研究のことを、いろいろお聞きしていました。







 
桐野

いい心がけです。最近では、
『中学生のなりたい職業ランキング』で、
研究者が4位にランクインしたみたいで、
子どもたちも研究について興味をもっているようですから。


桐野

しかし…、基礎研究は長い道のりです。
まずは基礎的知識を身につけることが大事です。







桐野

ええ…。
実際に基礎研究を初めてみて、
本当に長い道のりなんだなって強く実感しています。







桐野

まだまだ始まったばかりですよ。

何事も楽しむ気持ちが必要です!


桐野

あっ、そうそう、始まったといえば…
田和先生はプライベートでも新たな生活をスタートしたんでしたね。







 
桐野

………?
引っ越しでもされたんですか?







 
桐野

いや、実は結婚したの…。







桐野

おお、おめでとうございます!







桐野

ありがとう。
でも、なんだか照れくさいね。







桐野

日々の研究に取り組む中、プライベートもしっかり充実。
とても素晴らしいことです。







桐野

ありがとうございます。







桐野

研究も大切かもしれませんが、プライベートもとても大切です。
桐野くんをはじめ、後輩たちの良い見本となるよう期待していますよ!






 
桐野

はい…!
頑張ります!





 



 基礎研究に必要な継続性と忍耐力。

 その2つの力は、今の僕にとって一番必要な力なのかもしれない。

 …仕事でも、プライベートでも……。










 

桐野

あ、そうそう。

桐野くん、この前の資料もう読んだかな?


桐野

結構勉強になったでしょ。








桐野

あ、…え…はい。





桐野

桐野くん…


『仕事もプライベートも全力』でね。










桐野

あ、…え…はい。





 
 












 

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