鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 先進治療科学専攻 外科学講座 消化器外科学
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ゲカイチ

Vol.66

ー 女性外科医の時代 ー





 

 今年の夏は、記録的な暑さだった。夏の初めに開催された日本消化器外科学会総会が、遠い昔のように感じる。
 連日連夜の猛暑のせいか、盛大に開催された日本消化器外科学会総会の反動か、
心にぽっかり穴が空いていた僕をさらに追い詰める大きなできごと。


『喜例先生が、ゲカイチからいなくなる』。



 気づいた時には、喜例先生の研究室まで足が動いていた。







 

桐野

失礼します!





 
桐野

あら!どうしたの桐野くん、そんな怖い顔して





 
桐野

ゲカイチを出るって…本当ですか?





 
桐野

そう、名古屋の大学から乳腺外科の教授として
手腕を発揮して欲しいっていうお誘いがあってね。





 
桐野

な、な、名古屋!!…ですか…。





 
桐野

今の恵まれた環境をあえて変える必要があるのかとか、いろいろ考えたんだけどね。

 
桐野

でも、これからの女性外科医師のためはもちろん、
私にとっても大きなチャンスだから、がんばってみよう!って。





 
桐野

……おめでとうございます。





 
桐野

ありがとう!





 
桐野

…さびしくなります。





 
桐野

ふふっ、名古屋と鹿児島なんて、飛行機で1時間30分ぐらいだよ。
桐野くんも名古屋へ来た時は連絡して。おいしいお店、探しておくね!





 
桐野

…あ…あ………ありがとうございます……。





 

 それからどうやって医局に戻ったのか、あまり覚えていない。

うなだれるように座る僕を見かねたのか、江良井教授と半田先生が心配そうに話かけた。






 

桐野

桐野くん、どうした?失恋したみたいな顔して





 
桐野

!……!





 
桐野

……。私たちでよければ話を聞きますよ。

 
桐野

そうだよ!話をすれば楽になることもあるから!





 
桐野

…喜例先生が、名古屋の大学に行かれるって話を……。





 
桐野

そんなことか。僕の予想は遠からず当たってたんだ





 
桐野

喜例先生のことは、優秀な外科医が減ってしまうのでゲカイチとしてはとても残念です。

 
桐野

だけど、喜例先生の将来はもちろん、
若手女性外科医の大きな指針となるという面でも、とても有意義なことです。





 
桐野

…喜例先生も同じことを言ってました…。





 
桐野

そうだね。喜例先生が入局された当時は男性社会だったから、
女性の外科医の先生は珍しかったですもんね。





 
桐野

そうなんですか…





 
桐野

当時、ワークライフバランスや女性医師を支援する風潮は、残念ながらなかったですからね。

 
桐野

そのような状況の中でも、目標とされていた乳腺疾患という分野での活躍を目指し、
努力していた喜例先生の姿を今でも覚えています。





 
桐野

本当にそうですね。桐野くんにも見習ってもらいたい(笑)。





 
桐野

……………。





 
桐野

乳腺領域の外科的手術はもちろん、
女性の立場から切除後の乳房再建にも熱心に取り組んでこられてました。

 
桐野

関東の施設に最先端の形成を学びに行き、それをさらに発展させ、
自分なりに工夫した『キレイ式』など、
いろいろな新しい技術を考案・発表されましたね。





 
桐野

最近では、日本全国から数多くの先生方が手術見学に来られてましたもんね。





 
桐野

手術見学だけでなく、多数の学会・論文発表…。
それらの業績が名古屋の大学から認められ教授に就任されたのですから、本当に素晴らしいこと。
自分のことのようにうれしいですね。
名古屋でのさらなる活躍が楽しみです。






 
桐野

はい。





 
桐野

乳腺疾患は残念ながら今後も増加傾向だし、
有名人の罹患の影響や検診の重要性の認識の上昇などを含め、注目されている分野ですから、
きっと鹿児島にも喜例先生の活躍が聞こえてきますね。





 
桐野

そうですね。喜例先生に負けないよう桐野くんたちも頑張らなくちゃですよ。

 
桐野

ゲカイチでも後任の新畑先生をはじめ女性外科医の永井先生や野中先生が、
喜例先生の必死になって作られた乳腺外科医の道をしっかりと歩まれていますし、
本当に心強いですね。





 
桐野

ほら、噂をすれば、ちょうど向こうで3人の先生方がミーティングをされてますよ。





 

 そう言うと、半田先生が3人の先生方に声をかけた。





 

桐野

みなさんお揃いでどうされたんですか?





 
桐野

桐野くんが喜例先生の旅立ちを寂しがっているので、励ましていたんですよ。





 
桐野

あ…なるほど!





 
桐野

私たちだって、憧れの喜例先生が出て行かれるのはとても寂しいんですよ。

 
桐野

でも、喜例先生が必死に作られた乳腺外科の領域を絶やさないよう、
頑張ろうって話をしていたところです。





 
桐野

私は男だから、喜例先生のような女性からの視点で患者さんと接することはできないかもしれませんが、
永井先生と野中先生という女性医師お二人の大きな力を借りながら、
さらにゲカイチの乳腺外科を発展させていきたいって思っています!






 
桐野

心強いです!





 
桐野

本当にそうです。桐野くんにも見習ってもらいたい(笑)。





 
桐野

…それ…2回目です。





 
桐野

ははははは。
外科医は男性の社会だと思われがちですが、決してそうではないです。

 
桐野

乳腺疾患の対応ができる医師が求められている今、
男性外科医よりも女性外科医が活躍できるフィルードも広がっていますから。





 
桐野

ですね。男性の世界だと決めつけずに、
もっとたくさんの女性のみなさんに外科医を目指して欲しい。
そして、ゲカイチで一緒に医療に携わることができたらもっとうれしいです。





 
桐野

まさしく!喜例先生のような優秀な女性外科医がもっと増えれば、
患者さんにとってもとてもプラスになりますから。





 
桐野

…桐野くんもウカウカしてられない(笑)





 
桐野

もちろん、男性外科医のみなさんの活躍も非常に期待していますよ(笑)





 
桐野

は、は、はい!頑張ります!

 

 

 

 

 憧れの喜例先生が、次のステージへ旅立った。

 またいつかお会いできた時、喜例先生に一人前の外科医として認めてもらえるよう頑張ろうと改めて心に誓う。
そしていつか、喜例先生に認められるよう、頑張らなければ…






 
桐野

ちなみに桐野くん、喜例先生には…?




 
桐野

えっ!な、な、なんですか?





 
桐野

喜例先生と会う時、いつも鼻の下が伸びてますからね(笑)







 

 まずは、ポーカーフェイスと不屈の意志を持ちたい…。









 

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