鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 先進治療科学専攻 外科学講座 消化器外科学
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ゲカイチ

Vol.57

ー やる気とビジョン ー






 ジリジリと照りつける夏の日差しが落ち着き出した夕暮れ。
中庭には時折心地よい風が通り抜ける。夕暮れと言ってもまだまだ明るいので、
中庭にあるお気に入りの場所「木陰のベンチ」に座ってコーヒーを飲みながら
読みかけの雑誌を読もうと思っていたら、すでに先客が座っていた。




 

桐野

あれ、桐野くん!君も休憩?






 

 先客は、ゲカイチの中でも肝予備能の検索として、
患者さんのICG(インドシアニングリーン)検査と、アシアロ肝シンチにより肝予備能を予測し、
術後の残肝の機能予測及び、切除範囲の決定の臨床研究を長くされている飯田先生。







 

桐野

そうなんです。風が心地よかったので中庭で休憩でもしようと思って。






 
桐野

なるほどね。







 

 ふと飯田先生の手元を見ると、何やら難しそうな論文を携えている。
僕は、思わず左手に持っていた週刊誌を隠した。







 

桐野

論文ですか?






桐野

あっ、これ?
最新の再生医療に関する論文なんだ。






桐野

再生医療ですか






桐野

そう。
日本の若い先生が中心となって行っている再生医療の研究なんだよ。


桐野

ヒトiPS細胞を用いて、肝臓の臓器再生ができるかもしれない。

という、肝臓外科としては夢のような話が現実になってきているんだ。






桐野

ヒトiPS細胞を使ってですか!?






桐野

毎年、多くの肝臓移植待機患者がなくなっているといわれている。
もし肝臓の臓器再生が可能となれば、
多くの人に恩恵をもたらすかもしれない素晴らしい研究なんだよ。






桐野

すごい!
漫画のブラックジャックにでてきそうな話が現実に近づいているんですね。






桐野

ははははは。そうだね、
世界中の研究者の努力によって、漫画に出てくる夢のような技術が現実になっているからね。






桐野

ですね。






桐野

研究に関しては、ゲカイチも同じだよ。
ゲカイチでは後期研修を終えた外科医の先生は大学院に入学し、
担当患者を持たないベッドフリーとして基礎実験を行いながら


桐野

新たな癌の転移機序の解明や、
癌の進展に関係する遺伝子の解明などをおこなっているんだ。


桐野

基礎実験は結果はすぐにはでないけど、
今後の医療につながるかもしれない研究をしているんだよ。






 
 

  中庭で話していたら、最近ベッドフリーになって基礎研究を開始した下之田先生が歩いてきた。






 

桐野

ちょうどよかった。最近ベッドフリーになった下之田先生を紹介するよ







  そう言って、飯田先生は下之田先生を手招きする。






 

桐野

桐野くん、彼が最近ベッドフリーになった 若手のホープ、下之田先生だよ。






桐野

はじめまして!






桐野

もしかして実験中だった?






桐野

はい、ちょうど培養室にいくところでした。






桐野

なるほど。忙しいところ申し訳ない。






桐野

いえいえ、ちょうど煮詰まっていたので。
気分転換も兼ねてちょと散歩に出ていました。






桐野

そうなんだ。
まぁ、研究も始まったばかりだし、
あまり根を詰めすぎないようにね。






桐野

はい。ありがとうございます。
ベットフリーになってからは自分の時間で研究ができているので、とても充実しています!





 
桐野

あっ、あの〜、質問しても良いですか?







桐野

あっ!桐野くん、ごめんごめん。
下之田先生に紹介するの忘れてたよ。






桐野

…………。






桐野

下之田先生、彼がゲカイチの愛されキャラ、研修医の桐野くん。






 …すぐに忘れられる「愛されキャラ」。




 


桐野

あっ!君が! よろしくね!






桐野

よろしくです。


桐野

下之田先生は今どのような研究をされているんですか?






桐野

僕はPCRといってDNAを増幅させて解析を行う実験や、
三次元培養などの実験を担当しているんだよ。






桐野

もしよかったら、今度見学させていただいてもいいですか?






桐野

ぜひ、どうぞ!大歓迎だよ。






桐野

桐野くん!やる気あるね!






桐野

はい!皆さんがどんな環境で
どんな研究をされているのか、とても興味があります!






 ちょうどそこへ、江良井教授が通りかかった。




 

桐野

皆さん、お疲れさまです。


桐野

おや?下之田先生!もしかしてもう論文ができた…とか?






桐野

!!!






桐野

はははは。冗談ですよ、冗談。
研究の方、がんばってくださいね。期待してますよ!






桐野

はい!






 そう言い残し、江良井教授は足早に去っていった。




 



 
桐野

江良井教授、お忙しそうですね…。






桐野

病院長に就任されてから、さらにお忙しくなったみたいだね。
そういえば、江良井教授も基礎研究の時にドイツへ留学していたみたいだよ。






 
桐野

そうなんですか。






 
桐野

それに、今もアメリカに留学して研究に励んでいるゲカイチの先生もいらっしゃるしね。
あっ、そうそう。
以前、医学新聞にインタビュー記事が掲載されていた高島先生(Vol.42参照)
オルガノイドという小器官の研究をもっと研究するため、近々アメリカに留学予定みたいだよ。






桐野

高島先生もですか!






桐野

秋頃には出発するって聞いたけどね。
彼も研修医時代から留学希望があり、基礎的な研究のノウハウをしっかり勉強し、
今後の癌研究への足掛かりになるための努力を重ねていたからね。






 
桐野

(留学かぁ。やっぱり英語から。かなぁ…)







桐野

海外の基礎的実験や最先端の技術を実際に目で見ることは大切ですよね。






桐野

そうだね。海外はもちろん国内でも、いいモノを見て、
それを今後に活かすことは非常に大きい財産だと思うよ!






桐野桐野

はい!






桐野

幅広く知識を得るために、日々世界の論文を検索して読み込んでいくことも大事かな。
それに、継続的に取り組むことや失敗から得ることがとっても多いね。


桐野

細かいことや気になったことを記録し、
自分なりの答えを出せるようにとことん考えて、
その自分なりの答えを他の人にいかに上手に表現するかが重要なんだ。


桐野

「少しだけ経験年数が多い人間からのアドバイス。」
と思って聞いとけば損はないと思うよ(笑)。二人とも、頑張ってね!







桐野

まだ始まったばかりなので成果は出ていませんが、
やる気とビジョンを忘れずに頑張ります!
桐野くんに負けないよう、しっかり結果を出していきます!


桐野

それじゃ!




 

 なんだかすっきりとした表情になった下之田先生は、意気揚々と培養室へと向かっていった。


 研究か…。まだ先のことだと思ってたけれど、そろそろビジョンを持って真剣に考えなければ…。




 まずはその前に海外で研究するために英語から始めなきゃ…。

ん〜。…海外…。せっかく海外で研究するなら、やっぱり料理が美味しいところがいいなぁ。

それと近くに海があって、買物に困らないくらいの都会で、

…いや、ここは思い切ってニューヨークとかパリとか…ロンドンとかの…
大都市に行くって言う手もあるなぁ。









 

桐野

…桐野くん!桐野くん!


桐野

今、全然違うこと考えていたでしょ…








桐野

えっ!いや…。






桐野

なるほど…
ニューヨークとかパリとかロンドンとか、
独り言が聞こえたけどね…。(笑)






桐野

えっ!あの…。


桐野

……………すみません。













 

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