鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 先進治療科学専攻 外科学講座 消化器外科学
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Vol.41

ー 世のため、人のため ー




 ある日曜日の夕方。来週中に提出しなければいけないレポートをまとめるため、
医局で一人パソコンに向かっていると、江良井教授の声。



 

桐野

おっ、桐野くん!休日返上でレポート作成ですか!
がんばってますね!





 
桐野

おつかれさまです。
教授こそ、日曜日にどうされたんですか?





 
桐野

いや、明日の講演のための資料をチェックしようと思って来たら、
そこでばったり葉坂先生にお会いしましてね。




 






 江良井教授の隣でテニスウェアをオシャレに着こなしているのは、
手技がなかなかうまいと評判、今年入局したばかりの葉坂先生だ。






 

桐野

あ…。桐野と申します。ご挨拶が遅くなってしまい、申し訳ありません。





 
桐野

君が桐野くん!江良井教授から優秀な研修医がいるって、
よく話は聞いてます。






 
桐野

いや、そんなことは…





 
桐野

葉坂先生、あまり褒めすぎないでくださいね。
桐野くんはいろいろ考えすぎちゃうから(笑)





 
桐野

はは…(笑)






 

 江良井教授の指摘に、苦笑いするしかなかった。






 

桐野

葉坂先生はテニスだったんですか?





 
桐野

そう。他の科の先生方と軟式テニスでした。
試合が思いのほか早く終わったので、
明日のカンファレンスの資料をチェックしようと思って、
ちょっと寄ってみたんです。







 


 葉坂先生の軟式テニスの腕前はなかなかの物らしい。 と半田先生に聞いたことがあった。
自然と素振りをしてしまう葉坂先生を見る限り、今日は調子がかなり良かったのだろう。






 

桐野

調子、良かったみたいですね(笑)





 
桐野

あっ、わかりますか!今日は絶好調だったんですよ。





 
桐野

そうなんですか!
今日みたいな天気の良い日に身体を動かすと気持ち良さそうですね。





 
桐野

とても気持ち良いですよ!
そういえば、桐野くんは軟式テニスしないんですか?





 
桐野

あっ、はい。遊びでなら何回か行ったことはありますけど、
まだ試合に出れるほどの腕前ではなくて…。





 
桐野

なるほど。じゃあ、今度一緒に練習しに行きましょう!
まずは地道な努力から! 僕、教えますよ!





 
桐野

いいですね! ありがとうございます。





 
桐野

そういえば…
今年ノーベル生理学・医学賞を受賞された大村 智先生は、
ゴルフ場の土の中から『イベルメクチン』の元となる化合物
『エバーメクチン』を作り出す放線菌を発見したんだよね。






 

 日本国内23人目。

生理学・医学賞としては、利根川 進先生・山中 伸弥先生に続いて
3人目となるノーベル賞受賞者大村先生の研究の話は、
ノーベル賞を受賞される以前に江良井教授から教えていただいたことがあった。




 

桐野

はい。大村先生のお話は以前、江良井教授にもお聞きしていましたね。





 
桐野

おっ!桐野くん、よく覚えていましたね。





 
桐野

もちろんです!





 
桐野

大村先生の功績はもちろん、謙虚な人柄も非常に素晴らしいですからね。





 
桐野

はい!






 
桐野

エバーメクチンの開発に至るまで、採取・培養・分析の繰り返しという
『地道な努力』をされてきたことが、
今回のノーベル生理学・医学賞受賞という偉大な栄誉に結びつきましたね。





 
桐野

そういえば、全国各地で1年に2,500株以上採取して、
培養・分析を繰り返していらっしゃるって新聞で読みました!





 
桐野

今でも、財布の中に小さなビニール袋を入れて持ち歩き、
土などを採取されているらしいですね。

 
桐野

でも、その土の中から見つけた菌を培養して分析しても、
ほとんどの菌は活用できない。 だから地道な繰り返しがなければ、
『奇跡の薬』を生み出すことはできなかったでしょうね。





 
桐野

なかなか真似できないことだと思います。





 
桐野

大村先生をはじめ、歴代のノーベル賞受賞者はもちろん、
発明王のエジソンだって、
みんな目に見えない地道な努力をされてきたからこそ、
世のため人のためになるような大きな発見や発明ができたって思いますよ。





 
桐野

本当にそう思います。
偉大な発見・発明の裏には、地道な努力が必要ですよね。

 
桐野

それに、大村先生がノーベル賞受賞の記者会見で仰っていた
『人のために少しでも役に立つことはないか、それを絶えず考えている』
という言葉、今でも心に残ってます。








 
桐野

ちなみに…
わたしもマラソンの練習中に色々発見やひらめいたりすることがありますよ。





 
桐野

わゎっ、半田先生!





 
桐野

知識や常識とされた発想にとらわれることなく、
いろんなことに常に疑問を持つ。
という視点がなにより大事なんではないですかねー






 
桐野

そのとおりです。大村先生たちの発想や地道な努力がなかったら、
感染してしまうと2割の割合で失明してしまうと言われていた
オンカセルカ病や下肢が腫大してしまう
象皮病(フィラリア症)の治療薬もなかったですからね。





 
桐野桐野

はい。





 
桐野

それにしても、医学・生理学を受賞された大村先生をはじめ、
物理学賞を受賞された梶田先生など、
日本人の研究者の皆さんが世界で認められるのは本当にうれしいですね。





 
桐野

日本の学術の高さが証明されたのはもちろん、
地道な努力を惜しみなくされている方々に
スポットライトが当たったことがうれしいです。

 
桐野

僕ももっと努力しなきゃって思いました!





 
桐野

桐野くん、その気持ち、大切ですよ。
人を救うという意味では、外科医も同じです。
私たちも大村先生のように人のためになれるよう、
日々努力していかなければいけませんね。





 
桐野

はい!





 
桐野

僕たちも頑張れば、あと何十年後にはノーベル賞を受賞するかもしれませんしね。






 
桐野

はぁー…ノーベル賞ですかぁ!




 



 ノーベル賞受賞!その時は、大村先生のような素晴らしいスピーチができるかな…なんて…。





 

桐野

ほら。葉坂先生!
桐野くんがもうノーベル賞を受賞した気でいますよ(笑)。
だから、あまり褒めないでくださいって言ったじゃないですか(笑)。




 
桐野

はははは(笑)。本当に気が早いですね。




 
桐野

ははははは(笑)。




 

 『楽な道を行っても、いい人生にはならない。厳しい道を選ぶべきだ』という言葉通り、
大村先生は数千の菌を相手に非常に地道な努力を続けている。
その地道な努力は、2億と言われる人々を失明から救った。


 まぁ…ノーベル賞とは気が早いかもしれないが、
外科医としてより多くの人々を病気から救っていきたいという気持ちは同じ。
まずは、なにごとも地道な努力が必要なんだと改めて実感している…。


世のため人のため。そして自分のため。
よし、まずは地道な努力からだ!




「…葉坂先生!…練習いつ行きますか!」



 

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