鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 先進治療科学専攻 外科学講座 消化器外科学
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ゲカイチ

Vol.34

ー 出会いと別れ ー



 
春。新たな出会いがあれば、寂しい別れもある。
ここ最近のなんだか胸にポカンと穴が空いているような気分は季節のせいなのか…


ここゲカイチでも…。
そう、僕が右も左もわからない研修医になりたての頃、
とてもお世話になっていた吉丸先生がこの春、退官されたのだ。

手術部の部長を20数余年務められた吉丸先生は、
患者さんを第一に考えて医療に携わられていた診療教授として知られ、
時間外の土曜日に毎週施行していた腹部エコーの精度はCTやMRよりも精度が高い!
という逸話も残る、まさに「医療界の野武士」「匠の業師」と呼ぶにふさわしい先生だった…。




 
桐野

桐野くん!なんだか元気がないですね?失恋ですか(笑)





 
桐野

あっ!半田先生、おつかれさまです。
残念ですが、失恋するような恋愛もできてないです…





桐野

はははは(笑)。
桐野くんも返しだけは上手くなってきましたね。





桐野

返しだけですか!
うれしいような、うれしくないような。





桐野

いやいや、冗談ですよ。
じゃあ、仕事で何か悩みごとでも?





桐野

う〜ん、悩みではないんですが、
この春に退官された吉丸先生に
きちんとお礼を言えなかったことがとても心残りで…





桐野

そうですね。吉丸先生は、桐野くんが入局した頃から、
桐野くんのことを気にかけていましたからね。




吉丸先生……!



  

桐野

そうなんです!
研修医になりたての頃から、
よく声をかけていただいていたんです。






 
桐野

できの悪い子ほど可愛いって、言いますからね(笑)


 


 

そう軽く言い切られてしまうと、うまく返す言葉はない。




 
桐野

桐野くん!
お礼なら、今からでもお伝えすることはできますよ。





桐野

えっ?






 
桐野

さっき教授室に伺ったら、
吉丸先生いらっしゃいましたよ。







 
桐野

ありがとうございます!
ちょっと教授室に行ってきます!





桐野

桐野くん!病院内は走らないように!








 
   


後ろから聞こえる半田先生の声ではっと我に帰り振り返る。
半田先生は笑っていた。



教授室に着くと、江良井教授と吉丸先生が談笑しながら出てきた。





 

桐野 おや、桐野くん。そんなに焦ってどうしたんですか?




桐野

あっ、おつかれさまです。
半田先生から吉丸先生がいらっしゃっているとお聞きし、
ご挨拶させていただけたらと思い、
急いでお伺いさせていただきました!






 
桐野

ひさしぶりだね、桐野くん!



 
桐野

おひさしぶりです!
在任中、あれだけお世話になった吉丸先生が退官される際に、
きちんとご挨拶できなかったことをとても後悔していました。
本当に申し訳ありませんでした。





桐野

なんだ、そんなことを後悔していたのか(笑)





 
桐野

右も左もわからない時から、いろいろとアドバイスをいただき、
本当にありがとうございました!


桐野

外科医としてはまだまだ半人前ですので、
これからもいろいろと相談にのってください!





 
桐野 吉丸先生、私からも桐野くんのような
これからの若い医師たちの良きアドバイザーとして
いろいろな相談に乗っていただけるようお願いします。





桐野

いやいや、もう退官した身ですよ(笑)
それに、新たな病院で乳腺外科の立ち上げに
関わらせていただいているので、
桐野くんの期待に応えられるかどうか…






桐野 そんなことはありませんよ。
診療教授という役職にありながら、 病院再開発業務や
病院長補佐・手術部長・安全管理部長・乳腺外科チーフなど、
病院の中枢部で多大な貢献をされたことはもちろん、

桐野 患者さんを第一に考え、土曜日などの時間外に
腹部エコーを施行してくださっていたことなど、
人のために献身的に働かれていた吉丸先生だからこそ、

桐野 新たな病院での乳腺外科の立ち上げという
大変な役職が巡ってきたんではないでしょうか。




桐野

僕もそう思います。





桐野 長年に渡り切除標本の病理を見続け、
術前診断との対比をきちんとされるなど、
診断に断固たる信念を持ちながら取り組み続けられた
吉丸先生の後ろ姿を、たくさんの若い医師たちが見てきました。

桐野 ご自分のためではなく、患者さん・病院のために
献身的に取り組まれていた姿は、
医師の模範と言っても言い過ぎではないと私たちは思っています。




 

吉丸先生は、照れ臭さを隠すように頭を掻いている。





 
桐野

そこまで言っていただけると、なんだか照れ臭いな。





桐野

吉丸先生、よろしくお願いします!





桐野 桐野くんもここまでお願いしていますよ。




桐野

そこまで言われたら、お断りすることなんてできないですね。





桐野

ありがとうございます!





桐野 桐野くん、よかったですね。




桐野

桐野くん、こちらこそありがとう。
退官した私が若い先生たちの力になれるのであれば、
喜んで受けさせていただくよ。


桐野

でも、アドバイスするからには厳しくいくから、
常に気を引き締めておくように!





桐野

はっ、はい。ありがとうございます!





桐野

はははは(笑)。
桐野くんは本当にからかいがいがありますね。





桐野

いえ、吉丸先生の貴重なお時間をいただくのですから、
厳しく指導してください!





桐野

わかりました。
では、早速ですが来週にでも
若手の皆さんを集めて勉強会でも開きましょう!





桐野

えっ!来週ですか!
来週はちょっと立て込んでいて…





桐野 はははは(笑)。
桐野くん、自分の言葉には責任を持たなきゃダメですよ(笑)




桐野

こりゃ、やっぱり厳しくいかないといけないな(笑)






 
 
ゲカイチで働くすべての医師にとって、退官する時は必ずくる。
その時、吉丸先生のように若い医師から頼られる医師になれるよう、
日頃から医療と真摯に向き合わなければならない。


吉丸先生の偉大さを改めて実感するとともに、ボクが目指すべき医師の姿が見えてきたような気がした。
なんだか高揚した気分は、決して春のせいではないはずだ。





   

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