鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 先進治療科学専攻 外科学講座 消化器外科学
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ゲカイチ

Vol.97

ー 人類の終わりなき戦い。 ー





 

 暑い…というより、熱い…。
今年の夏は。なんて毎年言われることだが、今日の気温は38.5度。
さすがにこれはひどい。

こんな日は、早めに涼しい店でいつもと違った店でも行くか。
なんてキャンパス外にランチに行くといろんな意味でつらい思いをすることになる。






 

どうしたの?なんかヘトヘトだね…





あ、短畑先生、ちょっと聞いてくださいよ…





おやおや。めずらしく外に行ったと思ったら、メニューが気に入らなかったの?





いえ、凸山先生。
こんな暑いのにお店の空調が全然効いてなくて…ほらまだ汗だくですよ…





そんなに?クーラーが壊れてたの?ここ最近暑すぎるからねぇ…





橅山先生、おつかれさまです。
そうじゃなくて…お店の窓が開けっ放しになってて…。
クーラーを効かそうと思って閉めようとしたら、お店にいたお客さんにジロリと見られちゃって…。





あ〜新型コロナウィルス対策の換気か…。お客さんも意識の高いお店でいいじゃない





今は家庭内感染がほとんどというし、コロナって重症化しなくなってきたんじゃないんですかね…。
この暑さじゃマスクもやめたいですよ…





う〜ん、気持ちはわかるけど、医者を目指すものとして、それは見逃せない発言だなぁ





あ…ハイ…





BA.5の流行で感染力は高まってると言われてるからね。
まだまだ予断は許さない状況だよ





BA.5はまだしも今は“ケンタウロス”の流行の恐れも出ているからね





ケンタウロス…ですか?





そう、正式にはBA.2.75。
オミクロン株の亜系統BA.2から分岐した変異株で、感染力は高いけど重症化しにくくなったといわれるBA.5に対する優位性がある恐れがるといわれ、新たにこのBA.2.75の波が来るかもしれないと予想する研究者も多いんだよ。





えーっと…





…つまり…
『感染力が高くて、重症化もしやすいかもしれない株』が発見されたってこと。
まだはっきりとは言えないけど、さらに警戒する必要はあるというわけ。





と言うことは、まだまだ今まで通りの状態が続くんですね…。
辛いです…





う〜ん…桐野くん、まだまだ若いなぁ。
としか言うしかないね…。





あ…半田先生。…と言うと





何よりこの対策は、僕らのためでもある。
と言うことだよ





その通り。新型コロナウイルスは、デルタからオミクロンへ変異し、オミクロン株もBA.1→2系統からBA.5系統へとその性質を変幻自在に姿を変えて、ヒトへと侵入してきた。
では人類は変化できているのか…?

 感染力や重症化のリスクなど、まだ新型コロナウイルスの性質や変遷がはっきりとわからない現状では、今の社会のシステムや制度が医療現場の負担になってしまっているんです。





ロックダウン…





緊急事態宣言…





濃厚接触への対応期間の長さ…





さらに…発熱や上気道症状での病院受診の増加による、医療者側の感染増。
そして検査の希望・証明書・全数報告などの事務処理などで、医療現場は逼迫しています。





感染経路は、学童からの家庭内感染が多く、体力のある50歳以下が80%という、デルタ株の際の逆の現象となっているのも影響してますね…。





経済活動のことを考えると仕方がありませんが、現状では行政は人の集まりや公的交通機関の人数制限は特に行っていない状況ですからね…。





もちろん、コロナ感染の検査として、抗原検査やPCRを行える場所は増えてはいますけど、満足な環境とは言えず、その結果に時間がかかっているのも現状ですね…。





う〜ん…。
なにより、一番の問題点は病院の機能が麻痺して、治療や手術を受けられなくなったり、対応が遅くなってしまったりする患者さんが出てしまうことです。

医療者が大変な部分は、我々が頑張ればなんとかなりますが、治療を受けられる患者さんたちに不利益が出てしまう。
これは医療従事者として非常に辛いところです…。





つまり、感染予防に関して、一人一人ができることをみんなでやっておくこと。
これが医療現場の逼迫を防いで、本当に治療が必要な病気に対応できる一番の環境作りである。と言うことですね





…その通り。新型コロナウイルスは、1910年代にスペイン風邪が流行した際の感染の推移と非常に類似しています。

このパンデミックが始まったのは第一次世界大戦中。
一説によると、この世界的大流行により多くの死者が出たことで徴兵できる成人男性が減ったため、第一次世界大戦の終結が早まったともいわれているくらいです。





あ、教授。おつかれさまです!

でも、スペイン風邪みたいに2波、3波と繰り返して、ウイルスが変異したり、他の地域から繰り返し感染が持ち込まれても、人口の大部分が免疫を得れば大丈夫じゃないんですか?





う〜ん…それはあくまでも結果論でしかないよ。
実際に当時の日本では、スペイン風邪で30万人近くが死亡したんだ。
体力のない人、既往症のあった人、感染を防げば助かった命はたくさんあったはずで、むやみに感染してもいいと言う訳ではないんだな…。





その通り。
重症化の割合は少なくなったとは言え、感染者が増えれば、その分母は増えるわけで、その分重症者や死亡者も増えてきますからね。





スペイン風邪を例にとると、3つの流行の波がありましたが、第1波は広く多くの人が感染しましたが、死者はほとんどでない状態でした。
ところが、第2波では、ウイルスが変異したことで致死率が高まり26万6千人もの死者がでています。


さらに第3波は、年末の旧日本陸軍への新兵の入営日に、第2波を免れた新兵の入隊兵舎での集団感染が全国各地でおこり、それが全国流行の発火点となったのです。





…そして、翌年に本格的な殺戮。ですね。
第3波は、第2波より感染者数は少なかったのに多くの死者がでて、致死率はさらに高かったと聞いています。
第3波の流行に至るまで、政府によるイベントや営業の自粛、行動制限などの流行拡大のための予防対策はとられなかったんですよね。





それを考えると、感染者の数が、全国的にどんどん更新しているのは怖いなぁ…。
特に10万人当たりの感染者数が、沖縄、宮崎、鹿児島の順に多い。
南九州に多いのが気がかりで…。

現状のコロナ受診を考えると、医療施設は決して多いとは言えませんからね。





その通り。くりかえす新株の爆発的流行。
BA.5の流行と同時に発見された、BA.2.75の出現。
を考えるとまだまだ予断は許せない状態です。





普通に特効薬があればいいのに…。





そうだね。
内服薬のパキロビットも令和4年2月10日に新型コロナウイルス感染症の治療薬として特例承認されたけど、今は、安定的な供給と他の薬剤との組み合わせの処方が難しいことから一般流通は行われず、全国の医療機関への配分のみだね。
早く薬局で買えるようになったらいいね。

 







 内服薬だけでなく、ワクチン接種も、高齢者、医療関係者を中心に4回目の接種が進んできている。
感染症の扱いも近い将来、2類相当からインフルエンザのように5類へと引き下げられるものと思われる。
時間との戦いとは言えど医療業界の逼迫の解消も遠くないと言えるのであろう。








 

スペイン風邪の流行から、我々は新型コロナ感染症について何を学ぶことができたのでしょう。
 第1に、人の移動や密集がどれだけ流行を拡大させるかということ。
“三密を避ける”ことの重要性を改めて認識させられました。

第2に、流行は一つの波では終わらないこと。そして感染をくりかえすことにより、ウイルスが変異して致死率が高まる可能性もあるということ。
集団免疫を獲得するまで繰り返し流行が起こることは変わりません。

100年前と違い、医療の飛躍的な進歩により、第1波の治療経験を生かすことで現在では救命率が上がり死亡者も少なくなってきています。
しかし、完全な治療薬や、ワクチンが開発されていない点においては当時と変わりまらいのです。





だからこそ、感染防止に可能性の高いことはできる限り行う。
その姿勢が大事ですね…





その通り。それが医療現場の使命を果たすことにつながるのです。





そうですね。気を引き締めます…。





いい心がけです。パンデミック。これまでもその予備軍は、色々ありました。
これからも致死率のもっと高いものが、コロナのように感染力を発揮して全世界に広がることを想像する可能性もあります。

マラリアやペスト、エイズやSARS、サル痘…、これまでも、これからも留まるところを知らず、爆発的感染と殺戮は起こりえます。
そのつど、人間は戦っていかねばならないのです。





ところで、何を食べに行ったの?





ハイ!鍋焼きうどんです!大好物で…。





は!?





え?





そりゃ、汗だくだわ…








 

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