鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 先進治療科学専攻 外科学講座 消化器外科学
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ゲカイチでは他県で外科医として活躍され、鹿児島へ戻ろうと考えられている先生方に、留学や博士号などのご要望について、医局長が直接ご相談にのっています。
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巻頭言

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 この一年を振り返ると,国外ではイスラム国によるテロをはじめ,世界を恐怖に陥れる様々なテロ・事件が発生しました.身近なところでは, 8月,バンコクでの万国外科学会開催1週間前にテロがあり,発生場所が私たちの宿泊予定のホテルの100m以内であったことから,出席を急遽取り止めにしたというような出来事もありました.世界を恐怖に陥れるテロの問題は早く沈静化してほしいものです.



医療界では,腹腔鏡下肝切除術や膵臓切除術の周術期合併症や死亡率に関する問題が大きく取り上げられました.消化器外科分野での鏡視下手術の普及および発展にブレーキとなってしまう大きな事件でした.医療過誤はどの病院でも起こる可能性がありますので,各出張病院では,的確な手術適応や自分たちの技量を十分に把握したうえで,手術を行ってください.全員で術前リスク,術式,起こりうる合併症など,綿密な術前検討を行うことが必須です.さらに術前,術後あるいは合併症時に説明したinformed consentの内容を詳細に記載し,併せて患者さん・家族の理解度や反応を記載することが重要です.私は大学で現在安全管理部の部長を兼任しておりますが,医療監査の際に厳しい指摘を受ける事柄で,自分たちの身を守る上でも励行してほしい点です.
さて,教室関連の出来事では,3月には長年教室の発展にご尽力いただいた吉中先生が無事に退官されました.超音波検査を40年近く継続され,教室の術前診断に大きな貢献をされました.乳腺グループのチーフとして医局の後進の指導育成にあたられ,手術部部長,病院再開発推進室長,病院長補佐(安全管理担当)として,大学病院の中枢で活躍されました.長年のご活躍に敬意を表します.4月には3名の新入医局員(女性1名,男性2名)を迎えました.熱い闘志を秘めていますので,先輩の先生方には暖かく指導してほしいと思います. 4月4日に消化器・乳腺甲状腺外科,心臓血管外科,呼吸器外科,小児外科の外科4科合同で,初の拡大外科同門会を開催いたしました.外科医減少が加速化する中,鹿児島県の外科医療を守るために,各科が協力して若い外科医を育成していくことを目的として開催に至りました.奇しくも来年度より新専門医制度が開始されます.鹿児島で外科を志す若手医師が一人でも多く育つように各科より参加したワーキンググループのもと,良質なカリキュラム,プログラムを合同で作成中です.



 7月からは坪内病院長,旧第2外科の井本教授の許可を得まして鹿児島市立病院に,消化器外科3名,乳腺外科2名の派遣を開始いたしました.オール鹿児島外科の協力体制のもと,外科診療とともに研修医・若手医師教育に当たりたいと思います.研修医や学生が訪れる研修病院の先生方も教育をよろしくお願いします.

 私は7月15日に浜松市で開催されました日本消化器外科学会で,3年後の2018年に第73回日本消化器外科学会総会会長に選出されました.平成16年に鹿児島で第59回の本学会を愛甲名誉教授が開催されて以来,14年ぶりとなります.ちょうど日本消化器外科学会が学会創立50年を迎える年にもあたり,祈念式典も計画されております.同門,関連病院の先生方の温かいご協力をお願いいたします.


 教室から現在アメリカに2名,国内に1名が留学中です.さらにグローバル化が進み,国際人としての活躍が求められる時期にきています.若い教室員にはできるだけ留学のチャンスを与えたいと考えています.また,国内学会も次第に英語での発表を採用するようになってきていますので,英語の勉強は必須になります.常に英語論文を書くことにより,学会で英語の議論ができるように努めてください.本年度は5名(溝口資夫,尾本 至,浦田正和,辺木文平の各先生と西園由香さん)が学位を取得いたしました.この機会を研究の始まりとしてさらに飛躍してほしいと思います.


 地方の外科医不足が続く中で,大学病院や地域の関連病院で教室の皆さんは地域医療によく頑張っていると思います.しかし,学会発表や論文に関しては,他大学と比較しても同じような状況の中で業績をあげている教室は多々あります.大学のみならず,関連病院でも,アカデミック・サージャンとして学会発表や論文執筆をしてほしいと思います.中堅以上の先生方は,自らが行動して,出張してくる若手医師の手本となるようにお願いします.


 19世紀のフランスの哲学者ポール・ジャネーが考案した有名な「ジャネーの法則」をご存知でしょうか.主観的に記憶される月日の長さは若い人に長く感じられ,年長者には短く感じられるというものです.生涯のある時期における時間の心理的長さは,年齢に反比例するということです.50歳の人の1年の長さは人生の50分の1であるが,5歳の人は5分の1に相当する.したがって,50歳の人の10年間は5歳の人の1年間に相当する.逆に5歳の人の1日は50歳の人の10日に相当するという説です(Wikipediaより).


 時間の経つのが早く,あるいは遅く感じられることにもいろいろな場合があります.毎日が同じ繰り返しになっていて新鮮なことがない,あるいは感動することがない場合には,時間が早く感じられます.仕事に気乗りしなくて,だらだら過ごした時もいつの間にか時間が経って後悔することがあります.一方,難易度の高い長時間手術を完遂した時も時間は早く経ちますが,充実した気持ちになります.体調が悪いときや恐怖にさらされているときには時間は長く感じられます.国内外の知らない土地で,今まで見たことのない景色や建造物を見学して感動する時間は,心が研ぎ澄まされて時が長く感じられます.新しいことに向かって攻める生き方と,現状を維持する守る生き方がありますが,どちらも各人の価値観によって選択することができ,正解はありません.私自身は一日の時間は平等に与えられているので,常に新鮮な気持ちを忘れずに攻める生き方をしようと努めています.

 教室の皆さんは躊躇せず新しい仕事にどんどん挑戦して,学会や論文で発表し,公平な評価(Just)を受け,優れた仕事(Job)を達成することにより,次への飛躍(Jump)にしてほしいと思います.いつかしようと考えているだけでは時間は無情にも経過し,たとえ良いアイデアであったとしてもやがて古びたものになってしまいます.自分に課した目標を成就するためには,人生のどこかの時点で発憤興起することが必要だと考えます.各人が大志を抱き目標に向かって発憤興起し,今年一年が充実した時間となるように頑張りましょう.

鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 先進治療科学専攻 外科学講座 消化器外科学

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