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     平成23年は日本にとって歴史上忘れられない年になりました。
     3月11日に発生した東日本大震災は観測史上最大規模で、テレビや新聞などのメディアを通じて報道される津波の威力は想像を絶するものでした。
    福島原発事故やそれに引き続く放射線被爆は、やがて1年となる今も大きな問題となっています。
    大震災でお亡くなりになられた方々、行方不明の方々に深く哀悼の意を表します。
     昨年の3月初め、私は青森県の三沢市で開催された第83回日本胃癌学会に参加していました。
     寒さが苦手な私は、雪の中を移動する際、「東北地方の冬は大変だ、鹿児島は暖かく恵まれている」と感じながら過ごしましたが、その一週間後に東北地方は大震災に襲われました。
     しばらくして地震発生時にいた場所やわずかな時間のずれで生死を分けた様々なエピソードの報道を見聞きするたびに、今生きていることのありがたさ、生かされていることのありがたさを感じました。
     日本中の多くの人が、生きることの意義や、人との絆を深く考える年となりました。
     この思いを風化させることなく、心に刻み込んで生きる価値を自分自身に問いただしていくことが、これからを生きる私たちに大切なことだと思います。
     大学および関連病院から多くの先生方に震災地の医療支援に赴いていただきましたことを深く感謝いたします。
     

     

     さて、呼吸器外科の設立に伴い、教室名を「腫瘍制御学・消化器外科学」から「消化器・乳腺甲状腺外科学」に改めました。患者さんに解りやすく、国内外に向けて容易に情報発信できることを目的に、分野を明確にした名称変更を行いました。
     地域医療を支えると同時に、学会発表・論文執筆を通じて、自らの見識を深め、国内外での評価を求めていく姿勢が、私たちには求められています。
     基礎研究、臨床研究、症例報告など自分が経験したこと、患者さんから学んだことを明文化していくことの積み重ねにより、自分の医師・研究者としての存在が示されていきます。日々の臨床で手技、経験を後輩に伝えることとならび、 “井の中の蛙大海を知らず”にならないよう、外科医としての存在感を鹿児島にとどまらずに世界に発信していく心構えが必要だと考えます。
     
     H23年8月に分子応用外科学を寄付講座として開設しました。長年にわたり教室で行ってきた微小転移や遊離癌細胞の基礎的・臨床的研究をさらに発展させるとともに、実臨床への導入を目指して分子生物的・遺伝子的にバイオマーカーの発現解析を行っていく方針です。
     また、分子標的治療薬を含めた化学療法の標的となる微小癌細胞の特性を明らかにすることにより臨床応用に結びつけたいと思っています。
     現在のところ、上之園芳一特任准教授、有上貴明客員准教授の2名がスタッフとして講座に所属していますが、大学院生と協力して全力で研究を遂行して欲しいと思います。

     ところで昨年に引き続き、本年度も5人の新入医局員を迎えることができました。
     全員が非常に気迫に満ちた元気一杯の若武者であり、大学や各出張先で新旋風を巻き起こしてくれるのではないかと期待しています。一方、教室の関連病院を含め、地方の外科医療は依然として厳しい状況にあります。外科医の減少を今後、どのようにくい止めるかが大きな課題です。

     日本のスポーツ界をみると、なでしこジャパンのサッカーをはじめ、柔道、ゴルフ、フィギュアスケートなど女性の活躍が目を引き、日本女性はおしとやかだからというのは一昔前の概念になっています。

     医学界に目を向けると、鹿児島大学医学部入学者は女性が半数に達しようとする状況の中、鹿児島県では未だ女性外科医が少ない現状ですが、日本外科学会の統計では新入会員の22%は女性が占めています。
     この比率から概算しますと、当科に20人前後の女性外科医がいることになりますが、実際は2人のみが実働中です。女性の占める割合が、アメリカでは医学生の49%、外科医の19%、イギリスでは外科修練医の23%、とそれぞれ報告されています。
     すでに日本の他都道府県や外国では、女性外科医が活躍していることが通常となってきており、鹿児島で外科崩壊をくいとめる一つの方策として女性外科医の増加が必須です。
     教室全体の事業として、女性外科医が働きやすい環境の整備、出産、子育てなど家庭的問題の理解と解決していくことが重要であり、今後、女性外科医を育てる教室として努力していく必要があります。




     表題に掲げた「種芽木林森」は東京工業大学長の伊賀健一先生が、「私と科研費2009年9月号」に書かれていた随筆の表題「種芽木林森-それが科研費」からの引用です。
     種芽木林森に関する解説はありませんでしたが、私なりに解釈してみました。
     研究の始まりは小さなアイデア(種)をもとにこつこつと努力する。科研費を得ることにより実験器具などが整い、わずかながら結果(芽)が出てくる。この結果を論文にすることにより大型科研費が得られ、次第に大きな結果(木)に進展する。
     さらに他施設との共同により研究が一層発展(林)していく。そして最終的には世界を動かすような歴史に残る研究(森)になっていく。もちろん研究だけではなく、様々なことに当てはまると思います。人間が体内で受精し、生まれ育って成人となり、社会に貢献していく過程も同様です。
     私たちの教室にあてはめると、学生、研修医、若手外科医、そして外科医不足解消の鍵となる女性外科医を育成していく際にも「種芽木林森」の考え方は基本だと思います。

     外科医になった当初の個人の力は種かもしれませんが、良質であることには間違いありません。種を芽にするためには年齢に関係なく、各人の日頃の心構えが大事です。
     臨床や研究の場では自分自身に燃えるような情熱(Fire)を持たなければなりません。そして仕事(診断、手術、周術期管理、臨床・基礎研究など)をする時は巧みな、優れた(Fine)ものを追求していくべきです。そして日々の地道な努力で得られた結果は、論文などの形(Form)として残し、後世に伝授していく姿勢が大事です。教室員一人一人がどっしりとした根を持つ大木となり、多くの先輩方のご協力を頂き、大きな林、そして森となるように努力して参ります。

     本年もどうぞよろしくお願いいたします。 


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