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  • 「コロンビア大学留学」

     貴島 孝

     2017年10月から2020年4月までアメリカに留学させていただきました、2011年入局の貴島孝です。
     2020年4月にアメリカより帰国、現在は寺田病院に勤務しております。
    海外留学というとても貴重な経験をさせていただき、夏越前教授や医局の先生方には心より感謝申し上げます。

     昨年は激動の一年となりました。
    2019年7月よりNew YorkのColumbia Universityに移動し勤務を開始、New Yorkでの生活に慣れ、中川Labでの実験も順調に進んでいました。
    テーマとしては引き続き、4NQO投与によるMouseの食道上皮での早期発癌機序の解明、転移のメカニズムの解析になります。
     Mouseの食道Organoidの核異形度を評価、Low grade, High gradeとGroup化し、MouseへのXenograft tumorやTail vain injectionを行うことでOrganoidの悪性度とTumorigenicity、転移能との相関を確認できてきました。
     次に浸潤能を評価するため、Organotypic cultureを用いて研究を進め、DNA/RNA sequenceにて遺伝子発現の違いやPathway analysisを行う予定としていました。


    ↑研究室から見たNew York




     さて、2019年12月より中国にて発生したCovid-19のニュースについては、アメリカでは2020年2月までは遠い世界の出来事のように感じていました。
     3月1日New Yorkでの最初の症例が発生、徐々に不穏な雰囲気が漂ってきました。
    大学病院より研究棟のマスクや手袋の提供依頼があり、職場のPPEは急に少なくなりました。
     3月13日Trump大統領が非常事態宣言を出した直後、突然動物実験室のMouseの数を90%削減するようにとの達しが届き、3月22日には外出禁止令が発令されました。
     街の治安は悪化、通勤にて使用していた地下鉄が感染のリスクとされ、地下鉄の車内はホームレスの人が多く居座るようになりました。3月前半に提出予定であったDNA/RNA sequenceについてはアメリカの企業は営業停止となったため、何とか香港の会社まで輸送し解析を進めることができ、ほっとした記憶があります。
     大学の学生寮は追い出され、緊急のCovid-19病棟とする案や、人工呼吸器が不足したため、軍隊が出動しバックバルブマスクを24時間使用する案、アメリカ在住の外国人医師の緊急招集の案など、様々なNewsが飛び交いました。

     New YorkでのCovid-19のパンデミックをうけ、夏越前教授や中川先生へ相談の上2020年4月に本帰国することとなりました。
    帰国後は空港での検疫、2週間の隔離を終え鹿児島に帰り、現在に至ります。


    ↑2020年4月の5th avenue, Manhattan




     アメリカ留学にて強く感じたことは、日本も含め世界中から高い志を持ち、のし上がっていくんだという強い気持ちをもって頑張っている人がたくさん集まっていたことです。自分自身も改めてもっと頑張らねばと痛感しました。
     また、多様な価値観や様々な人種の人々と触れ合うことで、日本では経験することのできなかった、新たな考え方や価値観を学ぶことができました。しかし、研究者としての留学は決して容易ではありませんでした。

     周りは基礎研究を人生の仕事としてしている人ばかりであり、自分の知識、技術のなさを痛感することは多く、ただでさえCommunicationとしての英語が乏しい中どのように自分のOriginalityを出し、周囲から必要とされるかについてはとても苦労しました。
     その時に役に立ったのは、動物実験の際の外科医としての技術、病理学に対する知識、日本から引き続いて行ったOrganoidの知識でした。
    一外科にて教えていただいたことが留学にて大変役に立ち、これまでご指導いただいた諸先輩方には改めて感謝しております。
     今回の留学にて学んだ経験、人脈を帰国後、どのように生かすことができるかが今後の大きな課題となると考えております。
     最後になりましたが大塚教授、夏越前教授をはじめ教室の諸先輩方、後輩の先生方、またこれまで研究をサポートしていただいた医局秘書の皆様に心より御礼申し上げます。






    「コロンビア大学留学」

     下之薗将貴

     2018年4月に渡米し、ペンシルバニア州フィラデルフィアにある、ペンシルバニア大学で1年半の研究に従事した後、研究室の上司の異動に伴い、現在のニューヨーク州マンハッタン島内に位置するコロンビア大学にお引っ越しして1年半、合計3年間のアメリカ研究生活となりました。
    (2021年3月をもって日本に帰国)。
     私が所属する中川研究室の中川教授は世界的な食道癌研究の権威であり、同研究室は、3次元細胞培養技術や遺伝子改変マウスを用いた、発癌、癌悪性化の機序の解明に取り組んでおります。

     私が取り組んでおりました研究テーマは大きく、
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    ①食道癌細胞のアルコール暴露に対するストレス応答や、
     アルコールストレスにより腫瘍増殖が促進される機序の解明

    ②食道癌を含めた、頭頸部扁平上皮癌の3次元培養システムの樹立および応用、
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    です。
     3次元培養システムについては、薬剤反応試験など臨床に直結する研究の媒体として有用であり、生検検体や手術検体へのアクセスが容易な外科教室の強みを活かして、今後、鹿児島大学での研究に活用できればと考えております。


     さて、ニューヨークに移って半年間は、家族とともにニューヨーク生活を満喫していたのですが、その後の一年間は大変な期間となりました。
    新型コロナウイルスのパンデミックで命の危機に直面し、Black lives matterの歴史的な人権運動、いまなお混沌を極めるアメリカ大統領選挙を身近に体験し、多岐にわたって既存の価値観を考え直させられる貴重な経験ができました。
     3年間という留学期間は、第一外科の中では例外的な長期間であり、留学先の都合もあったとはいえ、ご理解をいただいた医局の皆様には誠に感謝申し上げます。
    長期的に研究室に所属したことで、研究、学問に対する理解が深まったことはもちろんですが、人の入れ替わりが激しいことも相まって、留学当初は新参者であったところが、最終的にはすっかり古株となってしまい、研究室内で様々な立場を経験できたことは、人間的にも成長できる良い機会となりました。

     前述しましたとおり、2021年3月をもって帰国し、4月から鹿児島大学病院での臨床復帰となります。
    長く臨床を離れていた不安はありますが、早く現場に適応し、留学で学んだことを教室に還元できるように努めて参ります。

    最後に、このような貴重な留学の機会をいただきました、第一外科同門の先生方に、この場を借りて御礼申し上げます。今後ともご指導、ご鞭撻のほど、宜しくお願い申し上げます。






    「順天堂大学
     アトピー疾患センター
     国内留学」

     松本龍

     令和1年度入局の松本龍です。
     令和2年4月より鹿児島大学大学院に所属しながら、現在、特別研究学生として順天堂大学アトピー疾患センターへ研究留学をしております。
    奥村康先生の教室で、内田浩一郎先生の御指導の下、臓器移植における免疫寛容に関する研究に従事しております。

     学生時代にマイアミ留学を通じて外科並びに、移植後患者の免疫機構に興味をもったのが、今回留学に至った主なきっかけです。
    癌の領域でも、近年の免疫チェックポイント阻害剤の登場により、抗がん剤や放射線治療等に加えて、免疫機構を制御することで、新たな治療の選択肢が増え、手術とこれらの治療を上手く組み合わせることでよりよい治療法が確立されつつあり、そういった外科をとりまく背景も、今回の留学に際して自分の背中を押したと思います。

     2020年4月より上京し、コロナ禍により緊急事態宣言も重なり、当時妊娠中の妻は鹿児島に残し、単身での東京生活が始まりました。
    仕事は忙しくても、仕事後やoffの日は一生懸命楽しむという一外科の素晴らしい風土と、サッカー部で培われた陽気さを武器に、仕事後は東京生活をenjoyする心積りでしたが、不要不急の外出自粛(飲み会は3密かつ不要不急でした)により、(幸いにも)研究に没頭することができました。家族よりもマウスといる時間が長かったです。


    ↑閑散とした地下鉄構内、2020年5月




     奥村研究室の大きなテーマは免疫寛容の解明です。
    つまり、他人の抗原(臓器)を自己として認識し、その抗原に対してのみ攻撃(拒絶)しなくなるという、まさに免疫の根源をなす問いです。
    身近な例では、食べ物を通じて常に外来の異物にさらされる腸管免疫や、胎児というHLAが異なる異物を体内に維持し続ける妊娠維持機構も、免疫寛容のメカニズムによるものです。
     新しいようで実は古い、そしてまだまだよくわかっていないのが免疫寛容です。
    それを解明するツールの一つとして、抗原性や時間経過などがわかりやすい、臓器移植をもとに免疫寛容解明に挑戦しております。

     当研究室で開発した共刺激分子(CD80/86)を阻害する抗体を用いることで、リンパ球のアナジー(無反応)状態を誘導し、このアナジー細胞を患者に輸注することで、肝移植後患者の免疫寛容誘導に高率で成功しました
    (Bashuda et al. JCI 2005, Todo et al. Hepatology 2016) 。

     現在、本治療法を用いて多施設共同の肝移植後免疫寛容樹立を目指した医師主導治験が始まり、今後は米国UC-DAVISとの国際共同研究により腎移植後の免疫抑制剤の最低量化や免疫寛容誘導にトライしていきます。
     In vitroの実験から始まり、マウスの心移植、サルの腎移植、そしてヒトの肝移植へと着実に実験結果が積み重なり、患者へ届けることが叶いつつあります。
     基礎研究の成果が治療学として臨床につながる様子をリアルタイムで感じることができるのも、当研究室の醍醐味かもしれません。


    ↑左から徳重先生、私、内田先生、原田先生




     私の研究テーマはCD80/86抗体を用いて誘導したアナジー細胞と、制御性T細胞(Treg)との関連について、マウスの心移植モデルを用いて解明していくことです。
     さらに、アナジー細胞やTregと免疫寛容への関わりについても、臨床的な視点で解明したいと思っています。
    これらの細胞は癌免疫など病態発生メカニズムへの関連に大きく関わっており、人体の恒常的な免疫メカニズムが何かしらのきっかけで破綻することが、そもそも病態の発生に関与することが報告されています。人体の免疫機構は巧妙に維持されており、非常に興味深いです。
     私の研究も、少しずつですが小さな結果が積み重なってきており、いずれ臨床の役に立つような、そして病態解明のヒントにつながるような成果を世に出すことが目標です。

     臨床から離れ、基礎研究に従事し約1年が経過しました。「外科医が基礎研究をする意義」について考えます。
    周りの研究者の先生方からも同じような視点を投げかけられます。
    なぜわざわざ外科医として成長著しい時期に、どっぷり基礎研究に従事するのか。

     そもそも「外科医」とは。
    「外科」も「基礎研究」も「サイエンス」という同じ枠組みの中でも呼び名にすぎないのではないか。
    「山手線」や「丸ノ内線」のような路線がたくさん走っていて、停車駅やカバーする地域は異なっていても、大事な味噌の部分は同じなのではないか。
    では、自分が思う「理想の外科医」とは、どのような外科医なのか。
    そして、外科医らしい基礎研究とは、どのような研究なのか。

     新しい事象を発見したとき、どう料理するのか(どの方向に研究を進めていくのか)悩みます。
    私が大事にしているのは、「臨床ではどう活かせるのか、臨床ではどういうことになるのか」といった治療学としての視点であり、
    そのような姿勢こそが外科医らしい基礎研究であり、外科医がなすべき研究でないのか。
    今はそう思っています。
    自分らしい外科医像を見つけて鹿児島に帰りたいと思います。

     最後にこの場をお借りして、このような貴重な機会を与えて下さった大塚隆生教授、夏越祥次前教授、そして医局員の皆様方に深く感謝申し上げます。
    コロナ禍のため単身で上京しました。
    実験がうまくいかないことや、畑違いでなかなか理解や手技が追いつかないことも多々ありました。
    しかし、自分は鹿児島の外科医だという気持ちがいつも最後に自分をつなぎとめ、地に足をつけて日々邁進することができました。
     今後ともご指導の程どうぞ宜しくお願いします。






 

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