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  • ショートストーリー「ゲカイチ」
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    ただ、上手くなりたくて。









     

    さぶっ…。







     

     マフラーでも持ってくるべきだったか…
     南国、鹿児島といえど、冬は冬。カーディガンにドクターコートでも鳥肌が立つ。

     明日は休みと言うこともあって、こんな日には、
    知らない男女で集まって騒ぎたいところだが、
    そうもいかないご時世…ツライ。

     新型コロナ発生の最初のニュースから、もうすぐ一年…。
    さすがに外出の自粛もこの時期までには緩和されるかな。

    なんて、希望的観測をしていた僕には、ほんとうに心もカラダも寒い季節だ…。







     

    おつかれさま。桐野くん。
    ふぅ…今日もハードだったね…。
    ここしばらくいつもの元気がないけど、
    やっぱりアレ…のせいかな?







    え、あ、大倉先生…ご想像の通りです…。
    年末の楽しくなるこの時期に合コンできないなんて…。
    コロナのせいで、これからの留学もいつできることになるのか…

    こんな『努力で超えられない壁』があるなんて、
    ホント生きがいがない…ですよ!







    まぁ、そう言うなって(笑)。
    いろんな情報が飛び交っているけど、
    正直なところ、新型コロナはまだ得体の知れないウィルス。

    みんなが自粛をしてくれているおかげで、
    医療を潤滑に進めることができるんだから。

    おかげで地方の医療崩壊は止められている。
    これはすごいことだよ。ね!黒尾先生







    凸瀬先生、その通り!
    安全に地域医療を守っていけるのは幸せなことだよ。

    ところで…明日はみんな休みだったね。
    おつかれの一杯、行っとく?









     

     前回と違って、今日はみんなが同時の休みになった。
    このメンバーで飲みにいけると言うのは神が呼んだチャンス。
    断る理由はない。

    ということで、
    黒尾先生の行きつけの『ちょっといい店』に向かう。







    平日だと言うのに、なんだか騒がしいですね…







     

    うん…、ここは個室だけの店だからね。
    コロナ禍でも安心できる店として繁盛しているみたいだね。
    ちょっと高いけど。







    …隣はもう帰るみたいだね。合コンだったかな?







    ちょっとお高い店で合コン…。
    ここにも『努力で超えられない壁』を感じますね…







    まぁまぁ…今日は久しぶり揃っての飲み会だ!
    今日は僕のおごりだから安心しなさい。

    あ、今日は桐野くんに会わせたい先生をお招きしたんだ。
    ちょっと面白い話が聞けるかもね。

    もうそろそろ、いらっしゃる頃なんだけど…










     

     とりあえずのビールが人数分テーブルに置かれて、
    さぁ乾杯。というところで、個室のふすまがガラッとあいた。







    やぁ、ごめんごめん。
    ちょうど隣の個室で昔の仲間と飲んでたんだ。
    たまたまこの店でよかったよ。

    時は金なり。
    すぐに動ける。ってことは大事だからね。







     

    あれ…ドクターY…お久しぶりです。
    …と言うことは合コンじゃなかったんですね。

    どんな仲間さんだったんですか?







    お、桐野くん、久しぶり!
    今日は凸瀬先生から話は聞いているよ。

    うん、留学先での同郷の仲間がこっちに帰ってきたんでね。







    あ、桐野くんに合わせたい…って、
    ドクターYだったんですね。







    そう、桐野くんが、最近元気がなかったからね。
    今日はドクターYのパワーをいただこうと思いましてね。











     

     いつも真面目でやさしそうなドクターY。
    パワーと言われたら、凸瀬先生の方がパワーに溢れている気がするけど…。






    …なんて思ってるだろ?
    桐野くん、ドクターYは実はすごいパワーの持ち主なんだよ。
    『努力で超えられない壁』なんてふっとぶから!







    そんなことないよ。







    たしか…先生は世界でもトップレベルの
    腹腔鏡手術、ロボット手術、肝胆膵外科手術の
    見学、修行に行ったんですよね…。







    そう、臨床留学で韓国にね。
    これがすごい話なんだよ!








     

     臨床留学といえば、華やかな欧米を想像する人が多いが、
    韓国の2010年から2014年の消化器がんの年齢調整5年生存率は、
    胃がん68.9%、結腸がん71.8%、直腸がん71.1%。
    と良好な成果を見せており、その医療技術への世界からの注目度は高い。

     外国医療人研修プログラムも用意されており、
    各国の医療人たちが、進歩した医療技術を学ぶために訪れている。







     

    僕は、ただ手術が上手くなりたかっただけなんだ…。
    なんといっても韓国には、世界でもトップレベルの
    腹腔鏡手術、ロボット手術、肝胆膵外科手術があるからね。







    留学はね、セキュリティがしっかりしている
    マンションとか家とかに住んだりするんだ。
    ところがドクターYは違います!

    足が伸ばして寝られないほど狭いアパートや、
    ダニが多くて、一晩寝れないほどの場所に宿をとったり…。

    ですよね…。







    なんというか、熱中してたんだねぇ。
    …それはそれで楽しかったけどね。







    たしか、韓国では登山が趣味になったんですよね。







    うん…手術を学んだ先生の趣味でね。
    山登り…といっても断崖絶壁を登るハードなやつ。

    いろんな意味で自分を追い込みたかったのかな!







    すごいのはそれだけじゃないんだよ。
    臨床留学の場合、給与をもらいながら。
    という人は少ないから…

    ドクターYは借金して無一文で留学。
    定期的に日本に帰ってきて、お金を貯めてまた戻る。
    というすさまじい執念。







    すごい追い込みようですね…まるで武者修行…







    好きなことならなんでもできるんだなぁ。
    手術のスキルアップのための手技の鍛錬はもちろん、
    先生たちの手術のビデオを何回もくりかえし見てトレーニングしたし、
    上手な先生がいると聞けば、わざわざうかがって手術を見せてもらったり…。

    ああ、それだけじゃない。
    韓国のカルテを見ながらの臨床研究や
    英文論文作成も楽しかったなぁ…。







    …あの論文は、そんな環境下で作られていたんですね…







    手術が上手くなりたい。の気持ちだけで…すごい…。







    その負けん気と反骨精神で、
    素晴らしいスキルを鹿児島に持って帰ってこられた。
    というわけ。







    今じゃ高度技能専門医を取得、
    そして技術認定医を目指しつつ、
    これからは若手に色々指導する立場の先生ですものね…。







    その通り。
    今では、おしもおされぬゲカイチ期待の中堅です。

    ね。桐野くん『努力で超えられない壁』なんて、
    考えてても意味ないだろ?








    まずは動いてみること。
    せっかく鹿児島で学んでいるんだから、
    『なこよかひっとべ(薩摩のわらべ歌)』

    あれこれ考えず、
    とにかく行動することも大事なんじゃないかな。







    ですよね!
    忙しくても、会えなくても…
    『リモート合コン』っていう手もありますもんね!









    …桐野くん…。







    ふふふ…冗談ですよ!
    ドクターY、明後日、ランチでもっと詳しく聞かせてください!
    休み明けのパワーランチです!








    そうそう、桐野くん、その調子!





     

     




    ゲカイチフッタ

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