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  • ショートストーリー「ゲカイチ」
  •  ゲカイチヘッダ
    出会いと別れとまた出会い。


     

    「おつかれさまです。届いてます!」

    ドサッ!…研究室宛にくる郵便物をここまで持ってくるのは、ここに来てからの僕の役割だ。
    別に嫌というわけではないが、気のせいか、
    ここ最近いつにも増してその数が増えてきている気がする。

    最近では両手で持つのも一苦労な日もあるくらいだ。


     

    桐野くん、ついでですまないが、
    しばらく教授あてのを分けて持って行ってもらえるかな。






     

    あ、はい!








     

    増えてきているのは江良井教授宛の手紙だ。

    内外に知り合いの多い教授のこと、
    学会などからの封書はもちろんだが、
    個人名からの手紙も多い気がする…。



     

    桐野くん、ご苦労さま。





     

    教授、最近手紙多いですね




     

    うん、そうなんだ…。
    桐野くん、ちょっとこれ見てよ。
    懐かしいなぁ…懇親会で会った他県の病院の先生だ!





     

    ゲカイチの先生たちで作った『surgeons』の歌に感動してくれたんだよ…。
    みんなは、『えらいバンド』と言ってたけど





     

    あ…『えらいバンド』て呼ばれてたんですね。






    命を預かる医者だからといって、その世界だけにとらわれていては、
    本当の意味で、患者さんを助けることにはなりません。
    よく学び、よく遊ぶ。これ大事です






    あぁ…外科医をモチーフにした教授の歌…
    日本消化器外科学会懇親会で全員で歌った歌、思い出すなぁ…。
    『それが春。今が春。』という部分はちょっと沁みましたね…






    …半田先生。






    医師にとって大事なチームワークを醸成するには、
    スローガンをとなえるだけでは形になりませんからね。






    ええ、めまぐるしく変わる医療環境に対応するには
    広い視野で行動することが重要です。






    医療安全、院内感染への対応…。
    教授が来られてから、医師をはじめ、
    スタッフの勤務体制にも余裕が出て来ました。






    働き方改革に積極的に取り組んで、
    若い医師・女性外科医師獲得の環境を整える。
    過酷と言われる外科医のイメージの改善ができました。






    確かに。外科医ばなれが全国で進むと言われる中、
    地方大学のゲカイチではたくさんの新入局員が入局している。
    この取り組み、成功ですね!






    デジタル時代を見越して、
    若い医師と距離が近いホームページや、メールを使ったネットでの
    外部への配信も功を奏してるようです。






    お、この人からも…!
    退院した山田さんですね。
    良かった、お元気のようです。






    実は…進行中の病院再開発で、一部病棟の取り壊しのため、
    実働の病床数は減少しているんです。


    患者さん・病院・職員を守るために、
    減った病床数の中で稼働率を上げる事が重要でした…。






    そのための、日々の病床稼働率や手術数の開示、
    職員全員への広報誌『かごゆホット』の配信、
    定期的な全体集会…。






    そう、地道な努力で病院全体の収益を上げる。
    病院長を3年兼任しているあいだ、
    経営者としての視点も大事でしたね。






     

    なるほど…
    稼働率をあげながらも、退院した患者さんから手紙が来るくらい、
    病院としてのホスピタリティを維持することは大変だったことに違いない。




    …ん…?






     

    え、なんか気のせいでしょうか?
    話が全部過去形になっている気がします…。






    …うん、ああ、そうなんだ。
    僕も65歳、3月で定年です。


    それにしてもこんなに手紙が来るとは思わなかったなぁ…






    …え…?





     

    手紙が増えたのはそういうことか…。
    時が過ぎるのは早い…。
    2009年の就任以来、長いようで、短いような…

    教授は多くの分野で、外科医としてのイメージを変えられた…。




     

    半田先生はじめ、
    ゲカイチのスタッフにはいろいろ協力してもらいましたね…。






    就任時の『多くの患者さんに“ありがとう”を言ってもらいたい』
    という言葉覚えてます…。






    この11年で教授はいろんなところにメスを入れた。
    というわけですね。






    外科だけに。






    …外科だけに。






    ………。






    …さぁ!
    思い出話はここまで!








     

    -----------------------------------
    『稼働率の維持・上昇』

    『コミュニケーションの改善』

    『労働環境の改善』

    『ゲカイチのイメージ発信』
    -----------------------------------

    箇条書きにしてみると大変なエネルギー。
    教授というのはハタで見るより大変だ…。






     

    …ということで、
    桐野くん、先日の患者さんの資料、早めによろしく。






    退官間近とはいえ、
    私だけでなくゲカイチの皆さんもやることはいっぱいです。
    次の教授のためにも、しっかり引き継ぎをする必要がありますからね。


    桐野くんも、よろしくお願いしますね!







     

    はい!





     


    …なんだか勇気が湧いて来た。
    このエネルギーを維持したい。
    次の教授のために、
    ゲカイチのために。

    だけど…
    今日はサーバーのコーヒーは、少ししょっぱいな…。








     

    ゲカイチフッタ

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