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  • ショートストーリー「ゲカイチ」
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    心・技・体




     半田先生に頼まれた資料を急いで届けるため、医局がある4階まで一気に階段を駆け上がる。
    3階を過ぎたあたりから急に息が上がり、それに比例するかのように階段を上がるスピードも落ちた。

     息を整えるため、医局の前で大きく深呼吸する。
    そんな僕の姿を見た高島先生が声をかけてくれた。



     

    桐野

    桐野くん、そんなに息を切らして大丈夫?



     
    桐野

    …だ、だ、大丈夫です。







     

     客観的に見て、大丈夫ではないのは明らかだ。








     

    桐野

    …お昼までに半田先生に…
    資料を…渡さなくちゃいけなくて…





     
    桐野

    あっ、そうなんだ。
    じゃあ、早く行った方が良いね!




     
    桐野

    すみません。








     

     半田先生との約束の時間には、なんとか間に合った。

    無事、半田先生に資料を渡し、乾いた喉を潤そうと近くの自動販売機に行くと
    高島先生がミネラルウォーターを2本手に携え待っていた。







     

    桐野

    どう?間に合った?







     
    桐野

    はい!なんとか…







     
    桐野

    おつかれ。とりあえず、水分補給!











     

     高島先生の優しさに、ちょっとキュンとしてしまった。






     

    桐野

    あっ、ありがとうございます!






     


     高島先生からミネラルウォーターを受け取ると、ゴクゴクと勢い良く飲む。
    こんなに水が美味しく感じるのは、部活で汗を流していた時以来かもしれない。







     

    桐野

    それにしても、美味しそうに飲むね。






     
    桐野

    こんなに水が美味しく感じるのは、部活の時以来かもしれません。






     
    桐野

    それ、わかる!部活中に飲む水は本当に美味しいもんね!






     
    桐野

    そういえば、高島先生って医学部時代はどこの部活に所属されていたんですか?






     
    桐野

    医学部時代は軟式テニス部に入っていたよ。







     
    桐野

    そうなんですか!






     
    桐野

    あの頃は、全日本医師体育大会に出場することを目標に
    テニスボールを追いかけていたな。






     
    桐野

    全日本医師体育大会ですか!






     
    桐野

    そうだよ。
    残念ながらあと一歩というところで負けてしまったけど、
    今では良い思い出だよ。






     
    桐野

    すごいですね!






     
    桐野

    いやいや、僕なんか全然だよ。
    江良井教授なんて学生時代に軟式テニスの
    全日本医師体育大会で優勝されていたからね。






     
    桐野

    江良井教授が!






     
    桐野

    そうだよ。桐野くん、知らなかったの?






     
    桐野

    はい…






     
    桐野

    「軟式テニスをやっている医師の中では江良井教授を知らない人はいない。」
    って言っても過言じゃないかもね(笑)。






     
    桐野

    そんなに有名なんですか!






     
    桐野

    テニスにおいても外科医としても、江良井教授は僕の目標だよ。
    江良井教授に憧れてゲカイチに入局したようなもんだね。









     


     噂をしていると軟式テニスの全日本医師体育大会の覇者が颯爽と歩いてきた。








     

    桐野

    おや、高島先生に桐野くん、二人で何を話していたんですか?






     
    桐野

    桐野くんに江良井教授が憧れのテニス選手だったっていうことを
    教えてあげていたんです!






     
    桐野

    はい!






     
    桐野

    憧れの選手だなんて、照れますね。
    でも、昔の話ですからね。







     
    桐野

    いや、僕の中では今でも憧れであり目標ですよ!






     
    桐野

    ありがとうございます(笑)。






     
    桐野

    全日本医師体育大会で優勝するなんてすごいです。






     
    桐野

    たまたまですよ。
    でも、現在外科医として活躍されている先生たちの中には
    ヨットのオリンピック候補選手だった方や

    桐野

    Jリーグの前身である日本サッカーリーグ(JSL)から
    スカウトされたこともある方など、
    学生時代に輝かしい成績を収められた先生方は
    たくさんいらっしゃいますよ。






     
    桐野

    すごいですね!






     
    桐野

    スポーツというものは…私たちの仕事に似ているかもしれません…。
    より良い結果を導くには、目標を立て、
    その目標に向かって計画的に取り組む。

    桐野

    そして、現在の自分の実力をしっかりと把握し、
    何が足りないのか考えながら、心技体を磨いていくことが大切ですからね。

    桐野

    これは単なる精神論でなくて、
    『深く追求し、弱点を克服するために日々努力を重ねていく!』
    この姿勢は、臨床・手術・研究と共通する点が多々ありますよ!




     
    桐野

    それに、部活という場は先輩・後輩や友人など、
    人間関係を学ぶ場所でもあります。

     
    桐野

    高島先生のような優秀な後輩たちが頑張る姿を見て、
    私自身がとても励まされますよ。






     
    桐野

    確かにそうですね。






     
    桐野

    江良井教授…。






     
    桐野

    同じ大学だけではなく、他の大学の学生とも知り合いになったり、
    自分の視野を広げるという意味でもとても有意義なことですね。
    その時に出会った友人とは今でも連絡を取り合う仲ですよ。






     
    桐野

    そうなんですか。






     
    桐野

    でも、やはり一番は、高島先生もそうなんですが、
    部活の後輩たちがゲカイチに入局し、
    一緒に医療という道でも切磋琢磨できることは
    本当にうれしいものです。






     
    桐野

    ……はい(泣)






     
    桐野

    医療とスポーツは似ているかもしれません。
    同じようにひとつのチームという面でも。
    個人競技であっても選手一人の後ろには
    たくさんの人々のサポートが必ずあります。

    桐野

    互いに支え合いながら、ひとつの目標に向かって進んでいく。
    それは、医療現場もまったく同じなんです。

    桐野

    桐野くんもまだまだ学業との両立は大変かもしれませんが、
    頑張ってくださいね。






     
    桐野

    はい!







     

     …人に歴史あり。

     全日本医師体育大会の覇者。江良井教授の輝かしい歴史を知り、江良井教授に対する尊敬の思いがさらに膨らんだ。

     よし、半田先生への提出も終わったことだし、ひさしぶりにサークルに顔を出して後輩たちと一緒に汗を流してみるか!



     そんな熱い思いを抱きながら、落研サークルの部室へ向かう。




     


     

    ゲカイチフッタ

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