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    末は博士か大臣か




     ゲカイチには、一般の患者さんが入ることができない場所、いわゆる関係者以外立入禁止の場所がある。


     この部屋もその内のひとつ。
    主に、実験・研究をおこなう部屋として、昼夜を問わず実験・検証を繰り返している先生方がいらっしゃる。辺田先生もその一人だ。




     

    桐野くん、最近調子はどう?






     
    桐野

    そうですね。
    あいかわらず半田先生に迷惑かけているかもしれないです。






     

    はっはははは!半田先生は大変だ。
    でも、手のかかる子どもほど可愛いって言うからね。






     
    桐野

    そう思っていただいていたらいいんですけど…。
    それに引き換え、辺田先生がやられている
    研究の方は順調みたいですね。






     

    そうそう。
    今までやってきた実験が、やっと身を結びそうなんだよ!





     
    桐野

    そうなんですか!すごいですね。





     

    でも、まだまだ気を抜けないからね。
    もうひと踏ん張りってとこかな。




     







     辺田先生は、2年間の研修医を経験した後、外科に入局しておよそ5年。
    外科専門医を取得後、現在は学位を取得する研究をおこなうため、
    ベットフリーとしてご自分の研究にとりくんでいる。

     ベットフリーとは、受け持ちの患者さんを持たず、
    実験・研究を中心におこなうことだと以前半田先生に教えていただいた。







      

    桐野

    博士になる日も近いってことですね。






     

    みんなに言われてる(笑)。





     
    桐野

    …ですよね(苦笑)





     

    でも、博士号の取得は医師として一つの大きな目標でもあるから、
    やる気が出るよ。





     
    桐野

    そうですね。





     

    研究を始めた当初は、やってもやってもうまくいかなくてね。
    何度も心がくじけそうになったよ。
    でも、多くの失敗の中から一筋の明かりが見えた時は、
    あきらめずに頑張ってきて本当に良かったって思う。

     

    あの失敗があったから良い結果が得られた。って、
    今では実感しているよ。





     
    桐野

    ところで、学位を取得する研究って
    臨床に反映できる研究が多いんですか?





     

    そうだね。マウスを使用したりするなど、
    様々な基礎的手技を駆使した基礎的研究をおこなう人が多いかもね。
    外科医にとっては、まずは臨床で疑問に思ったことを基礎的に解明し、
    実際の臨床に応用・展開する!っていうことがベースになるからね。

     

    研究のための研究ではなく、
    臨床に反映できる研究がやっぱり基本になると思うよ。

     

    免疫染色や蛋白抽出・遺伝子発現やマイクロアレイ、
    PCR等々の専門的手技を獲得したり…
    これまでどういうことがなされていたかを紐解くために
    たくさんの論文を読んだり…

     

    先輩や教授はもちろん
    その道のオーソリティのお話を聞きに行ったり…
    色々なことが要求されるんだ。





     
    桐野

    大変なんですね…





     

    研究は日々の積み重ねが大切だからね。
    それに、研究結果を英文論文としてまとめるのが、
    とても大変だったって先生方が言っていたよ。





     
    桐野

    英文論文ですか!





     

    あっ!噂をすれば、
    大変だったって脅していた先生がいらっしゃった。



     

     

    向こうから森熊先生が近づいてくる。






     

    桐野

    おや、辺田先生に桐野くんじゃないか!
    それにしても、珍しい組み合わせだね。






     

    おつかれさまです。
    いや、桐野くんが博士号取得に興味があったみたいなので。





     
    桐野

    そうなんだ、
    桐野くん。 今日はいつにも増して勉強熱心だね(笑)。






     
    桐野

    …は、はい(苦笑)。





     
    桐野

    博士号取得か…。懐かしいなぁ。





     

    以前、森熊先生が
    英文論文として研究をまとめる時が大変だった。
    っておっしゃっていたことを桐野くんに伝えていたんです。





     
    桐野

    あー、英文論文ね。僕の時は、研究がやっと上手くいった後で
    ちょっと気が抜けてしまった時だからね(笑)。
    でも、一生懸命書いた論文が掲載された時は、本当にうれしかったよ。





     
    桐野

    そうなんですか。





     
    桐野

    あの時は、寝る間も惜しんで没頭していたからね。





     
    桐野

    英文論文が受理・掲載された後は、何があるんですか?





     

    学位審査があるんですよね?





     
    桐野

    そうそう、学位審査!主査一名・副査五名の前で講義説明があるんだよ。
    あれは緊張したなぁ。

     
    桐野

    それに、講義説明が終わっても、質問の嵐!
    その質問に理路整然と答えることができたら、
    いよいよ博士号が取得できるんだよ。

     

     

     

     


    僕の背後からいきなり声が聞こえた!






     

     

     

     

     

    桐野

    そうですよ!
    私も時々ですが主査・副査として
    皆さんの講義説明を聞かせていただいてますよ!





     
    桐野桐野

    教授!お疲れ様です(汗)





     
    桐野

    お疲れ様!皆さん、精が出ますね。
    そうそう、学位審査の際の質疑応答ですが、非常にシビアですよ。
    きちんとした回答が求められるので、より深い思考能力が必要です!
    辺田先生も常に考えておく訓練が大切ですね。





     

    はい!





     
    桐野

    それにしても、長い道のりなんですね。





     
    桐野

    そうです!博士号を取得するのは大変なんです。
    でも、一つのことをここまで集中して掘り下げ…、

     
    桐野

    それを論文として残す作業は、
    今後の臨床を行う上で非常に重要ですし、
    何よりも自分の財産になりますからね。


    桐野

    まずは、物事を深く考えること、調べることを自然と身につけることです。
    そうすれば、臨床でもacademicな態度で診療がやっていけるはずです。


    桐野

    患者さんは、医師の技術と知識を要求しているのです。
    常にacademicな態度が必要なのです。





     
    桐野

    本当にそうですね。
    あの時、一生懸命頑張って良かったって思います。

     
    桐野

    それに、博士号を取得できた時、
    両親が一番喜んでくれたのがとても思い出に残っているよ。
    少しは親孝行できたのかもね。





     
    桐野

    ちょっといい話ですね(泣)。





     
    桐野

    辺田先生もあとひと踏ん張りですから、がんばってくださいね。





     

    はい!ありがとうございます。
    今は大変ですが、この時間を乗り越えた時、
    きっと自分の軸となる自信につながると信じてがんばります!





     
    桐野

    辺田先生、最後まで気を抜かないようにがんばってくださいね!





     
    桐野

    そうそう、僕を反面教師としてね。

     
    桐野

    って、誰が反面教師だ!





     
    桐野

    …そんなつもりでは…





     
    桐野

    はははは(笑)。冗談だよ、冗談。

     






     

    森熊先生は冗談と笑っていたが、一瞬見えた鋭い眼光を僕は見逃さなかった。





     

    はははは(笑)。森熊先生も桐野くんの相手は大変ですね。





     
    桐野

    そうなんだよ。わかってくれるかい?





     

    桐野くんの相手より、研究の方が楽かもしれませんね(笑)。






     

     

    博士号取得への道。僕にはまだ先の話なのかもしれない。
    けれど、ひとつの研究に没頭する時間は、きっとこの先、医師として進むためには必要な時間なんだと思った。

    それを乗り越えた時、自分にとっての軸となる自信につながる。そう信じて没頭している辺田先生が、なんだか輝いて見えた。

     

     

     

     

     

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