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  • ショートストーリー「ゲカイチ」
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    医療の分岐点


     
    午前の診療が一段落した、13時20分。
    受付ロビーにあるテレビの前に、人だかりができている。
    人々の視線の先には、小惑星探査機「はやぶさ2」を搭載したH-IIAロケット。
    13時22分43秒に種子島宇宙センターから打ち上がる
    「はやぶさ2」の発射を、固唾を飲んで待っていた。



    発射へのカウントダウンが始まったその時、背後から江良井教授の声が聞こえた。






     
    桐野

    宇宙という未知なる世界への挑戦!
    ロマンを感じますね。






     
    桐野

    あっ!江良井教授、おつかれさまです。






     
    桐野

    桐野くんも宇宙に興味があるんですか?






     
    桐野

    いやぁ、あまり詳しくはないですけど。興味は…







    そんな曖昧な答えを打ち消すように、H-IIAロケットが白煙を上げて空へと飛び立った。
    その様子を江良井教授が無言でじっと見つめている。

    アナウンサーがH-IIAロケットの打ち上げ成功を伝えると、
    江良井教授の頬がやっと緩んだ。

     




      

    桐野 ふぅー、無事に旅立ちましたね。
    でも、ここからが大変なんですよ。





     
    桐野

    えっ!?何が大変なんですか?






     
    桐野 小惑星探査機『はやぶさ2』は、
    2018年に目標の小惑星「1999 JU3」に到着後、
    小惑星の表面にタッチダウンを行い、
    小惑星表面の物質を採取するだけじゃなく、
     
    桐野 さらに新規設計の衝突装置により人工クレーターを作り、
    そこから小惑星内部の物質採取をおこなったりした後、
    地球に帰還するのは2020年なんですよ。





     
    桐野

    戻ってくるのは、6年後ですか…






     
    桐野 そう、6年後。前回のはやぶさの時には、
    通信が途絶えたり、
    機械の不具合などで帰還が延期されましたからね。
     
    桐野 でも、そのような予測ができない困難な状況の中でも、
    諦めずに最善の道を導きだし乗り越える。


     
    桐野 それは、外科医も同じですよ。





     
    桐野

    外科医もですか?






     
    桐野 目の前の患者を治療するということはもちろん、
    患者さん一人ひとりにとって最善な手段を導きだせるよう、
     
    桐野 常により良い医療技術を身に付ける。
    という気持ちがとても大切です。





     
    桐野

    はい。僕もそう思っています。






     
    桐野 医療の世界は常に進歩しています。
    その進歩に追いついていけないようではダメですよ。





     
    桐野

    はい。






     
    桐野 そうそう進歩と言えば、
    ゲカイチでも来年あたりに念願の手術支援ロボット
    『ダヴィンチ』の導入が決まりそうです。





     
    桐野

    あの手術支援ロボットですか!



     





     

    手術支援ロボット「ダヴィンチ」とは、患者に触れず、
    医師が患部の立体映像を見ながら遠隔操作でアームを動かす、
    ハイテク技術を駆使した画期的な手術法が行える医療ロボットのことである。










     
    桐野 おっ!さすが桐野くん。
    ダヴィンチのこと知っているみたいですね。





     
    桐野

    もちろんです!
    以前、半田先生に教えていただき、
    とても興味を持っていました。






     
    桐野

    桐野くん!何か呼びましたか!?






     
    桐野

    うわぁ!








     
       


    背後からの半田先生の登場に、心臓が止まるかと思うくらい驚いてしまった。





     

    桐野 桐野くん、ここは病院ですよ。





     
    桐野

    も、申し訳ありません。






     
    桐野 半田先生もあまり桐野くんをからかわないように(笑)。






     
    桐野

    申し訳ありません。
    桐野くんがあまりにも無防備だったもので、つい。







     
    桐野 そうそう、
    半田先生が以前から言っていた手術支援ロボット
    『ダヴィンチ』の導入が決まりましたよ。





     
    桐野

    江良井教授!本当ですか!ありがとうございます!






     
    桐野 半田先生たちの念願でしたからね。





     
    桐野

    はい!これからさらに多くなる腹腔鏡手術などにおいても、
    ダヴィンチの可能性が高まっていますので。






     
    桐野

    3Dカメラが患者さんの体内を
    リアルな立体画像で捉えることができるので、

     
    桐野

    今までは不可能とされていた角度からの
    視野の確保ができるんですよね?








     
    桐野

    そうなんだよ。
    3D画像は実際の術野を見ているのに近い感覚だから
    遠近感なども捉えやすく、

     
    桐野

    血管の縫合などの細かい作業が鏡視下手術と比較して
    格段にやりやすいみたいなんだ。






     
    桐野

    それは、すごいですね!







     
    桐野

    それに、組織をつまんだり切ったりはもちろん、
    針を持って縫合するなど、
    マスターコントローラーの動きに連動して、

     
    桐野

    指先のような細かい動きまで行えるから、
    まるで自分の手指のような感覚で
    手術がおこなえるらしいのです!






     
    桐野

    患者さんへの負担はもちろん、
    これまで立ったまま長時間の手術をおこなってきた
    医師の肉体的な負担もかなり軽くなりますね。






     
    桐野

    そうなんです!無理な体勢や長時間立ったままなど、
    肉体的な負担も軽くなりますし、

     
    桐野

    それに術者の手ぶれを制御して
    繊細な手技をサポートしてくれるので、
    より確実な手術がおこなえるんです!






     
    桐野

    手術支援ロボット『ダヴィンチ』ってすごいですね!






     
    桐野

    でも、『ダヴィンチ』はあくまでもひとつの技術です。
    安全に取り扱うためには、術者の技術修得と向上が不可欠ですよ!






     
    桐野

    そうですね。より確実に、より安全に運用するためには、
    日々の訓練と努力が必要だと常に思っています。

     
    桐野


    でも、ゲカイチがその技術を磨ける場所になるって、
    素晴らしい(泣)。





     

    最近の半田先生は涙もろい。





     
    桐野

    一人の人間にとっては小さな一歩だが、
    人類にとっては大きな飛躍である。






     
    桐野

    人類で初めて月面着陸した、
    ニール・アームストロング船長の言葉ですね!






     
    桐野

    そうです!
    来年はゲカイチにとって大きな飛躍の年になりますね。







     
    小惑星探査機『はやぶさ2』が帰還予定の2020年。
    その頃の医療は今とは比べものにならないくらい
    大きく進歩しているかもしれない。

    その時、ゲカイチの先生たちのように
    常に向上心を持って医療に携わる医師になりたい!
    あらためて、そう心に誓った。






     

     

     
    ゲカイチフッタ

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