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     本年度は政治が低迷する中,12月に民主党から自民党への政権交代があり,医療を含めた福祉事業や経済政策にどのような展開になるのか注目された年でした.
    首相が短期間で交代する日本に比べ,アメリカではオバマ大統領が2期目の再選を果たしました.新政権には本邦の危機を救うために,どっしりと腰を落ち着けて刹那的でない骨太の方策を実行して欲しいものです.
    医療制度や研修医制度も都市部中心ではなく,医療過疎である地方の現場を重視した改正など,今後の展開に期待したいと思います.

     本年度の医学会で明るかった出来事は山中伸弥教授のノーベル生理学・医学賞の受賞でした.ニュースなどで研究経歴を拝見すると,当初は少数の研究者たちと少ない研究費で必死に努力されており,決して順風満帆ではなかったことがうかがえます.
    「研究をする上でのモットーは,ビジョン&ワークハード.目的を持って一生懸命に働く.非常に当たり前のことだが非常に難しい」.「私は本当に誰もやっていないことだったら,どんな研究でも価値があると思っています.だからこそ,若い研究者には,誰かの真似ではないか,繰り返しではないか意識してもらいたいのです.本当のイノベーションは未知の領域でしか見つからないのです.」という先生の言葉が印象に残りました.

     臨床家である私たちにも同じことが言えると思います.患者さんを漫然と診るのと,患者さんが臨床的疑問に関する何らかのヒントを与えてくれていることに気がつくのとでは大きな違いで,毎日の心がけが重要であることは言うまでもありません.
     問診,家族歴,生活歴などから得られる疾患に対する疑問,術前診断の精度を向上させる方法,手術方法や手術の際に必要な器具の開発,合併症が起これば次の症例に対する工夫など,まだまだ日常診療から得られるヒントは沢山あります.
     先人に教えられた基本的知識や手技はしっかりと習得することは当然ですが,それに固執すると現状維持のままであり,前進はなくむしろ退歩していきます.
     次世代の外科学の発展には斬新なアイデアと挑戦していく情熱が必要です.毎日の忙しい診療の中にも臨床的・基礎的問題点を常に意識することが大事であり,新しい考えが浮かんだら綿密な計画を立て,失敗を恐れずに執念を持って遂行していく姿勢を持ち続けて欲しいと思います.成功は努力する人にのみ訪れるのです.

     本年度の教室関連の出来事では,長い間同門会長を務められました鮫島耕一郎先生が,平成24年4月6日にご逝去されました.先生は教室に多大の貢献をされましたが,鹿児島県医師会長,日本医師会理事など対外的にも多くの役職を務められ,全身全霊を尽くして鹿児島県の地域医療に,そして日本の救急医療に多大な貢献をされてこられました.衷心より敬意と感謝の意を表し,ご冥福をお祈り申し上げます.

     4月には3人の新入教室員を迎えました.3人とも真面目かつ明朗で,自由闊達な雰囲気をかもし出しており,教室に新旋風を巻き起こしてくれています.様々な経験を糧に大きく育ってほしいと思います. 10月には臨床腫瘍学講座特任教授に上野真一先生が就任されました.地方の医師不足は深刻な問題であり,がん診療にも大きな影響を及ぼしています.
     このような厳しい状況の中,地方や離島のがん治療の均てん化が大きな課題の一つになっています.上野先生のこれまでに培った外科手技を含めた集学的治療と教育に関する幅広い見聞は,がん専門医やがん専門メディカルスタッフの育成に向けて礎となることでしょう.新たな境地で活躍されることを期待しています.

    また,本年度は5名が学位を取得しました.学位取得はゴールではなくて生涯教育の一過程ですので,研究で培った洞察力を臨床の場で活かして欲しいと思います.ここで決して踏みとどまることなく,新規のアイデアを捻出し,基礎・臨床研究を継続して行くことが大事だと思います.更なる発展を期待しています.

    さて,武田信玄の有名な言葉に「人は城,人は石垣,人は堀,情けは味方,仇は敵なり」があります.これは勝敗を決する決め手は,堅固な城ではなく,人の力であり,個人の力や特徴を掴み,彼らの才能を十分に発揮できるような集団を作ることが大事であるという意味です.
     また,人には情理を尽くすこと,誠実な態度こそが相手の心に届き,人を惹きつけることに繋がり,逆に相手を恨めば必ず反発にあい,害意を抱くようになるということです.

     私が掲げる大きな目標の一つは多くの若い外科医を育成することです.過去の外科医に対する教育であった「見て覚えろ」の時代から,「させて導く」の新しい時代に変化してきています.先輩の役目として学生,研修医,若い先生方が生き生きと育つ環境を作っていくことが重要です.大学病院より研修する医師が多い県内の病院に勤務する指導的立場の先生には,教育に関する自らの意識改革を是非行ってほしいと思います.
     学生時代に外科志望であったにもかかわらず,外科の旧体質に馴染めず,研修中に外科を断念したという若い医師の話を耳にし,非常に残念な思いをしました.優しさの中に心がこもった厳しさは,若い人たちは必ず受け入れてくれるはずです.教育を通じて自らも成長するために,誠意を持った対応をお願いします.
     
     ベテラン外科医は若い人たちの教育のみならず,自らの生涯教育も実践していくことも重要です.教室の先生方をみるとそれぞれ個性があり,色々な分野で秀でたものを持っています.自らの良い部分を一層伸ばすとともに,不足する部分は謙虚に受け止め改善していく努力を惜しまない態度が必要です.多士済々の人材からなるさらに盤石の組織を形成していくためにも,自己研鑚を積んで欲しいと思います.
     先ず与えられた仕事に一生懸命取り組み,試行錯誤しながらそこから派生した素晴らしい(Good)アイデアを基に,自分なりに創意工夫した仕事に発展させることが大事です.
     地道な努力によって,次第に大きな(Great)な結果が得られます.得られた結果は学会発表や論文を通じて本邦のみならず,世界に向けて(Global)発信していってください.
     各人の自覚と努力に根づく生き生きした組織の姿に,学生,研修医,若い医師も必ず共感を持ってくれると信じています.教室の発展のために,今年もどうぞよろしくお願いいたします. 


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