鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 先進治療科学専攻 外科学講座 消化器外科学
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ゲカイチ

Vol.93

ー 温故知新 ー


 

 



 

うぅっ、さぶっ






 

 果たして鹿児島に秋はあるのだろうか?
 この前までの暑さが嘘のように影を潜め、鹿児島大学病院の丘に吹く風は一気に首元を冷たくなでる。

 さすような陽射しのなんだかワクワクする気分から、一気に人恋しさへとモードが変わるのは自然なことだろう。






 

あれ?教授どうしたんですか?






あぁ、桐野くん…。うん…ちょっとね…。






 

 大学病院の中庭のベンチに腰掛け、空を見上げている教授を見かけてしまったら、
声をかけざるを得ない。

 そもそもこういうのは、ぼくの専売特許のはずだ。






 

教授はね、真剣に嘆いているんだよ。







吉能先生…
私はね、やるせないのです…。






 

 いつもパワフルで力強い教授が、切なそうなモードになっているのは、
秋風のせいだけではなさそうだ。








 

吉梅先生、
…カンファレンスも少なくなりましたね…。







だいぶ落ち着いているとはいえ、
いまだコロナ禍ですからね…







オンラインでのコミュニーケーション…、
学会もwebがメインです…。







リアルなコミュニケーションの場が少ないですからね…







ええ…飯旺先生…
そして…飲み会禁止です…。







若手医師や研修医、
そして学生との懇親会などのチャンスが奪われたのは、
ゲカイチのリクルートにおいて、大変な痛手ですよね…。







ですね。東川先生。
ぼくも前もって教授や医局の皆さんと
話ができたことが入局のきっかけでしたから…。







それまでは、
なんとなくゲカイチは怖いところだと思ってたもんね…







そうでしょう!

画面越しだけでは、ゲカイチの熱い想いはなかなか伝わりにくいのです!







確かに…。







もどかしいです…。
これからの医療界の充実のためには、
リクルートはもちろん、色々な考え方、
つながりを身につけるのは重要事項です。

だけどこのような状況ではそれもままならない…。








 

最近は

『ワクチン接種率の増加』
『3密の回避の常識化』
『アルコール消毒やマスクの習慣化』

などのおかげか、
飲食・旅行などコロナの第5波は予想以上に落ち着いた。


 現状、さまざまな制限も緩和されて、景気も元に戻ってきつつあるとはいえ、
まだまだ第6波の到来に備えて、ここゲカイチだけでなく医療界はさらなる気の引き締めが求められている。


 ●入院患者さんへの面会は原則禁止。
 ●ご来院される全ての方への不織布マスクの着用。
 ●入院予定の患者さんには2週間前の健康観察。
 ●医科診療科は、予約・紹介状による診療のみ


 鹿児島大学病院でも、最低限とはいえ患者さんにも色々なお願いをしている状況の中、
仕方ないとはいえ理想通りの動きが取れない。

 そのことを教授は歯がゆく思っているのだろう。






 

コロナウイルスに関しては、
この状況下で色々なことがわかってきました…。

まずは、
『物を介しての感染力は強くないこと』







ええ…CDC(米疾病対策センター)では

『表面感染のリスクは低く、主な感染経路の直接接触した飛沫、
エアロゾル経由のウイルス感染に対して二次的にとどまる』

としていますね。







ウイルスの変異型の特徴…。







インドから世界中に広がったデルタ株ですか…。
WHOでは、2021年の5月11日
「注視すべき変異」
と位置付けたんですよね。







そう。CDC報告でも、
従来の新型コロナの2倍以上の伝染性があることが確認されている。
季節性インフルエンザよりも強い感染力で、
空気感染する水痘と同等レベル。

つまり、感染対策が従来より重要視される。
感染力が強い理由に、
その粒子が他のウイルス感染症より小さいことが
示唆されてるからね。







その通り。ワクチンに効果があるとはいえ、
変異株では効果がやや低くなることや、
潜伏期間が短く、入院・ICU入室・死亡のリスクも
2倍以上と言われています。

『ワクチンを打てば大丈夫』と過信せずに、
まずは、マスクを含めた感染対策の徹底で
『ウイルスを体内に侵入させない』
取り組みの強化が大切なのです。







そうなるとエアロゾルの回避は重要課題ですね。








 

 エアロゾルは、通常の呼吸から肺胞から空中に放出される、大きさ数マイクロメートルから数十マイクロメートルのものすごく小さい粒子だ。

 コロナは、口腔や鼻咽頭よりも肺で増殖するため、エアロゾルには多くのウイルスが含まれる。
それがいったん空中に放出されれば、数時間にわたって空中を浮遊しながら拡散し、閉鎖的な空間ではそのまま空中に蓄積する。
 換気システムを通じて、上下のフロアに感染が拡大したケースも報告されているくらいだ。






 

ええ、屋内におけるリスクは大きいのです。
屋外では日光などの要因によってウイルスが破壊されるため、
室内の空気を屋外に排出するシステムは非常に大事です。







発症後の後遺症もありますね…。







倦怠感、息苦しさ、嗅覚・味覚障害、脱毛、神経障害…
新型コロナウイルスに感染後、療養期間が終了しても、
症状が慢性化や新たに出現したりすることがわかってきています。

これについては症状が多いため、患者の検体も多く必要です。
メカニズムを調べるにも時間がかかるので、
治療法に関してはまだ先が見えない状況です…。







一般の方に軽症・中等症・重症の
対応の定義を広めることも大事かもしれませんね…。

あ、あと薬剤の開発状況も気になります。







治療薬に、
レムデシビル、デキサメタゾン、バリシチニブ、カシリビマブ
などが認可されていますね。
死亡率が大幅に下がったと言われていますが…。







ええ…ですが、
副作用の大きさや薬効が患者のケースによることもあり、
特効薬というにはまだまだといえるでしょう。







そういえばこの前、テレビで言ってたんですけど
コロナ感染症の症状のレベルに関して、

<一般の人のコロナ感染症の症状に対するイメージ>

○軽症 :風邪程度だろう

○中等症:息苦しい程度だろう

○重症 :入院が必要なんだろう

ですが、実際は…

●軽症 :症状はきついが、とりあえず酸素投与は要らない

●中等症:肺炎によって多くの人が「人生で最も苦しい経験」

●重症 :助からないかもしれない

が適切な表現だと言っていました。







面白い表現ですね。
そのイメージが広がれば適切な対応がしやすくなるかもしれません…。

少しずつではありますが、
さまざまなことが検証され判明して、
知識が広がってきていることは希望の光でもあります。







とはいえ、重症化で大変な思いをしている方、
そして死に至る方もいらっしゃいます。
気を緩めてはならない。
いえ、もっと気を引き締めなければいけませんね…。







まさしく…。おや、もうこんな時間ですか…。

次の授業があるので、
コロナ談義はこれくらいにしておきましょうか。







はい。ありがとうございます!
なんだか気が引き締まりました。








桐野くん…。
しばらくはリアルで密なコミュニケーションは
まだまだお預けです。

ということで、
私の医者としての座右の銘の元になったこの本を
自宅より持ってきました。

(ドサッ!)
とっても熱い本なので、
来週末までに読破してくれることを期待していますよ。
あ、もちろん消毒済みです。







きょ、教授…
これは『熱い』というより『厚い』ですが…。







その通り。重くて重くて…
ここまで持ってくるのに、疲れてベンチで一休みしてました…。
若い頃だったらこれくらいなんともなかったのに…、

やるせないです…。







え…飲み会がなくなって元気がないのかと…。







私はいつでも元気ですよ?
リアルも大事ですが、リモート診察を始め、
時代に合わせた新しいコミュニケーションを上達させればいいだけです。
『温故知新』が私の座右の銘ですからね。

私は負けません!
さぁ、この本で意気込みを新たにしてください!







わ、わかりました…。








 
   

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