鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 先進治療科学専攻 外科学講座 消化器外科学
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ゲカイチ

Vol.76

ー そのエビデンスは? ー




 今日は朝から機嫌が良い。
というのも看護師さんの間ですごく当たると評判の占い師に占ってもらって、
今月から来年にかけて仕事運・恋愛運・健康運、すべての運が絶好調と言わればかりだ。 




桐野

♪ふふふ〜ん









なんだかいい気分でリポートを作成していると、
今年入局された田実先生と小田P先生が声をかけてきた。







桐野

鼻歌なんか歌っちゃって!楽しそうだね?







桐野

えっ!歌ってました?






桐野

気持ちよく歌ってたね(笑)。何かいいことあった?







桐野

いやぁ、昨日…。








 占いの結果をを小田P先生と田実先生に説明していると、
臨床研究の手ほどきをしてくださっている大蔵先生と佐々先生が話に入ってきた。










桐野

桐野くん、そのエビデンスはどこにある?







桐野

大蔵先生!

エ、エ、エビデンス! か、科学的な根拠ですか!







桐野

ただ、すごく当たる占い師さんって、看護師さんから聞いていたので…。







桐野

うん…。
その方はどのくらいの人を占って、どのくらい的中しているのかな?







桐野

…えっ、えっ〜と。







桐野

はははは。大蔵先生、
急にエビデンスって言われてもかわいそうですよ(笑)
まぁ、医療の分野では、
臨床研究の重要性が指摘されるようになってから、


桐野

勘や経験則に頼るだけじゃなく
エビデンスの追及がかなりおこなわれるようになってきましたから。
ね、田実先生!







桐野

…佐々先生、そうですね(笑)







桐野

うん、最近では癌の診療はもちろん、
やけどや褥瘡、肺炎や外傷など、


桐野

さまざまな診療や薬剤の取り扱いに関しても、
たくさんのガイドラインが使用されるようになっているんだ。







桐野

ガイドラインって、どのくらいあるんですか?







桐野

うん、小田P先生…
国内の診療や薬剤だけでも、ガイドラインは500程度存在するらしいよ。
医学は進歩しているから、
常に最新の臨床研究発表を情報収集していくのは難しい…。


桐野

そのために、
最新の知見をわかりやすい形でまとめたガイドラインがあるんだよ。


桐野

最新の標準治療や推奨グレード(推奨度)に関する情報を
現場に行き渡りやすくすることで
診療の質を保つことができているというわけだ。







桐野

そんなにあるんですか!
でも、そんなにたくさんある中から
どうやって選んでいけばいいんだろう?







桐野

ガイドラインが推奨する検査法や治療法の信頼度の目安となるのが
『エビデンスレベル』なんだけど、
現在最も推奨度が高いと言われているのが『メタアナリシス』だね。







桐野

病気や治療法など共通した研究データを集め、
統計学的な手法を用いてデータを統合して
総合的に評価する方法ですね。







桐野

その通り!よく勉強してるね。
メタアナリシスは、治療法の比較のために、
複数の臨床試験結果をまとめる場合にも用いられたりしているんだよ







桐野

一つひとつの試験の結果が異なる場合や、
症例数が少なくて正確な評価ができない場合などに
有効な手法と言われているね。







桐野

その他にはどんな手法があるんですか?







桐野

そうだね〜。有名なのは
『ランダマイズド・コントロール・スタディ』
(ランダム化比較試験)かな。







桐野

あっ!知ってます!
評価のバイアスを避け、
客観的に治療効果を評価することを目的とした
研究試験の手法のことですね。







桐野

そう!2つ以上の治療法や検査法などを比較する臨床試験では、
対象となる患者さんを2つ以上のグループに振り分けるんだけど、


桐野

その際に、コンピュータの乱数表やくじ引きなどの方法を用いて、
作為性が入り込まないようにする試験のことだね。


桐野

患者さんを振り分ける際にバイアスが生じないから、
治療法や検査法の有効性を客観的に調べることができるので、
結果の信頼性は高いと言われているね!







桐野

その他にも、
ある病気が発症する危険性の高い集団とそうでない集団を長期間観察して、
病気の発症率や進行の程度、
死亡率などを調べる研究手法『コホート研究』や


桐野

すでにある病気を発症してしまった患者さんと、 その病気を発症していないけれど、
その患者さんと年齢や性別などがマッチした人を選んで、
カルテなどの医療記録などから、
その病気の原因を探る研究手法『症例対照研究』なんかも一般的だね。







桐野

なるほど…研究方法もたくさんあるんですね。







桐野

でも、メタアナリシスやランダマイズド・コントロール・スタディなどよりは
信頼性は高くはないかもしれないけど、
症例報告や専門医の意見なども重要なエビデンスのひとつだよ。
稀な病気、特殊な治療法などの場合はRCTを実施することが難しいからね。







桐野

その通り!ガイドラインも日進月歩。
日々どんどん改定されているから、
常に自分自身もバージョンアップさせていかないとね。






桐野

そうですね!







桐野

常にこれでいいのか?という姿勢や、
新しい知識にも自分で考えて進歩を心がけることが大事!
ということかな。







桐野桐野桐野

はい!







桐野

あっ!そうそう、桐野くん。
そういえば、この前集めておいてって頼んでいた
例の治療法に関する研究データだけど、進捗具合はどう?







桐野

あっ、あの研究データですね!

今提出しようと持ってきたところです。


桐野

あと、参考になりそうな新しい治療方法を見つけたので、
その治療方法との比較データも入れておきました。







 ん…なぜ…? 先生方が言葉を失っている。







桐野

…えっ、あっ、ありがとう。







桐野

では。半田先生にもレポート渡しに行くんで失礼します。
また何かありましたら、声をかけてください。







 さぁ、半田先生のところに向かおう。ちょっと急がなきゃ。








桐野

…桐野くん、どうしたんだろう…?







 先生方のヒソヒソ声が聞こえてくる。

 …どうもこうもない。
占いで『今、頼まれている仕事を早めに片付けると今後の評価につながる』と言われたから、
朝イチから取り組んでいただけだ…。








桐野桐野

…桐野くん…進歩してるね…。





桐野桐野

…のようですね。僕らも頑張らないと…。






良かった。 朝イチからやっといて…。

占いでも科学的な根拠でも、評価のバイアスを避け、
素直に何事にも全力で取り組む。

これが僕の進歩のエビデンスだ。









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