鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 先進治療科学専攻 外科学講座 消化器外科学
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Vol.50

ー 日々是勉強 ー




  今日は朝から食道グループの先生方を中心に、食道癌を患っている患者さんに関する治療方針について話し合うカンファレンスがあった。

 カンファレンスルームは、いつにも増してピーンと張り詰めた空気に包まれている。



 

桐野

今回の食道癌の患者さんですが、腫瘍の範囲・進展度から考えると
手術と化学療法を組み合わせた治療を行うのがベストだと思われますが
いかがでしょうか?






 
桐野

うーん。そうですね。
ところで、放射線科の検査結果はどうでしたか?





 
桐野

放射線科の検査結果では……








 

 江良井教授をはじめ、すべての先生方の表情がとても厳しい。







 

桐野

(小声で)今日のカンファレンス、いつにも増して緊張感がすごいですね。






 
桐野

(小声で)どのような症状の患者さんでも、
治療プランを決定する時はどのプランが患者さんにとって一番最適なのか、
みんな自問自答しながら決定するからね。








 

 話し合いがまだまだ続きそうなため、一度休憩の時間が設けられた。

 コーヒーを飲もうと医局に向かおうと廊下へ出ると、
食道グループの先生である外門先生、佐々先生、尾口先生が
先ほどの治療プランについて話し合いながら歩いていた。







 

桐野

おつかれさまです。







桐野

桐野くん。おつかれさま。
さっきの患者さんに対する治療プラン。君はどう思う?







桐野

あっ、はい。
外門先生が仰っていた治療プランが最適だと思いましたが…






桐野

よかった。でも、最後の最後まで患者さんにとって
何が一番最適なのか考えていかなきゃね。







桐野

そうですね。







桐野

あっ、そうそう、さっき江良井教授が仰っていた
放射線科の検査結果でちょっと気になるところがあったんだけど……







 

 食道癌に関してはCTやMR、PETなど放射線科が主体となって行う検査と
エコー、超音波内視鏡、胃カメラ、透視など外科が主体となって行う検査を実施している。
それらの検査を複合的に組み合わせることで食道癌を発見し、
その腫瘍の範囲や進展度、いわゆるステージ・病期が決まる。

 その進展度に応じて、化学療法・化学放射線療法・手術・陽子線治療等々の治療、
またはそれらを組み合わせた治療など、どのような治療を行うのが最も好ましいのか、
グループ内もしくはカンファンレスで話し合い治療方針を決めていく。





 

 
桐野

皆さん、いつにも増して険しい表情だったので、ちょっと怖かったくらいです。







桐野

はははは(笑)。そんなに険しい顔してた?







桐野

はい…。







桐野

そうだね。治療方針を決める時は、
もっと良い方法はないのか、常に考えているかもね。






 
桐野

症状だけを見るのではなく、患者さんが治療に耐えうる体力なのかとか、
栄養管理や炎症の程度などは大丈夫か、他臓器の状態は大丈夫か、
心機能や肺機能等のチェック、歯のチェックまで行っているし。





 
桐野

全身状態・年齢・家族背景はもちろん、
全身の合併症・状態、併存疾患等を十分に加味した状態で
最終的な治療プランを立てるからね。






桐野

考えなきゃいけないことがいっぱいありますね。







桐野

最終的には、積極的な治療プランを組み立て、
ご本人もしくはご家族の方にしっかりと話して、
説明と同意の上で治療を進めていくんだよ。







桐野

そうなんですか。






 
桐野

それに…どうしても僕たちが考えて治療方針に耐えられないと判断した場合などには、
痛みを取る、栄養を補う、苦しいところを和らげる治療をメインとした
緩和ケアというプランを行うこともある。





 
桐野

緩和ケア…ですか?





 
桐野

緩和ケアに関してはカンファレンスにも出席されていた
浦島先生を中心に行われているから、
カンファレンスの後にでも浦島先生に紹介してあげるよ!





 
桐野

ありがとうございます!










 

 それからもカンファレンスは続き、一通り治療方針が固まった時にはもう、お昼の時間を超えていた。







 

桐野

桐野くん。ちょっとこっちに来てもらってもいい?






 

カンファレンスが終わった直後、佐々先生に呼ばれて着いていくと一人の先生が江良井教授と談笑していた。






 

桐野

お話中に大変申し訳ありません。
浦島先生、こちらがさっき話をしていた研修医の桐野くんです。







桐野

はじめまして。研修医の桐野です。







 
桐野

君が桐野くんか!江良井教授から噂は聞いているよ!







桐野

噂…。一体、どんなだろう…







 
桐野

今、私がどんな話をしてたんだろうって思いましたね、桐野くん!






 
桐野

いや、そんなこと思っていませんよ(汗)!







桐野

はははは(笑)!噂通りですね。
大丈夫。桐野くんは勉強熱心だって褒めていただけだよ。







桐野

なるほど。







桐野

桐野くん、緩和ケアについて知りたいんですよね?







桐野

はい!







桐野

緩和ケア…ね。その言葉を聞くと、
癌治療ができなくなった方への医療と思われている方もまだまだ多いですが、


桐野

そうではなく癌治療の初期段階から癌治療と一緒に受けるケアであり、
緩和ケアとは癌による心と身体の苦痛をやわらげ、
自分らしい生活を送れるようにするケアのことなんですよ。







桐野

そうなんですか。







桐野

大学病院にも精神科や血液内科、消化器外科の医師や看護師はもちろん、
栄養士や薬剤師などがチームを組んで患者ケアを行う緩和ケアチームがあるし、
最近では緩和ケア病棟を持つ病院も数多くなりました。


桐野

それに、病院でのケアの内容を詳しく把握し、
患者さんにわかりやすくお話しするケアマネージャーや
ソーシャルケアワーカーなどマネージメントを行う方もいますね。







桐野

そうですね。それぞれの専門知識を持ったプロフェッショナル達が
一つのチームとして患者さんと向き合うことが緩和ケアではとても重要ですね。







桐野

まさしく江良井教授の仰る通りです。
特に高齢率が進み、全人的にケアを行っていくことが必要な時代においては、
治療だけではなく生活面や医療費など経済的な問題についての相談を受けたり、


桐野

社会的サービスや在宅医療を受けるための支援を行うケアマネージャーや
ソーシャルケアワーカーの方の力がとても大切になってきますね。







桐野

なるほど…。とても勉強になります。







桐野

医師にとっても緩和ケアの知識はこれから重要になってくるだろうし、
トータルでマネージメントできる人材が
必要かつ不可欠になってくると思うよ。







桐野

本当にそうですね。トータルマネージメント…
できるように頑張ってみます!







桐野

浦島先生、桐野くんは本当に勉強熱心でしょう?







桐野

その情熱を大事にして頑張ってください。







桐野

はい!







桐野

あと、この前のレポートのまとめもよろしくお願いいたします。







桐野

あ…。はい。







 


 なるほど…。治療するだけではない。手技や研究はもちろんだけれど、
それ以外にも勉強しなければいけないことがまだまだいっぱいあるってことか…。

トータルケア…まだまだやりたいことがいっぱい。
というのは嬉しいような苦しいような…不思議な気持ちだ。


…よし! 
まずは、新しいレポートから取りかかることにしよう!







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