鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 先進治療科学専攻 外科学講座 消化器外科学
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ゲカイチ

Vol.32

ー 変わるもの、変わらないもの。 ー



 
 その日、医局には早朝からたくさんの人が集まり、満60歳という節目の年を迎えられる江良井教授をみんなでお祝いする祝賀会を開く準備をしている。
祝賀会の準備を進める医局員の輪の中心には、この日のために制作した渾身のドキュメントビデオ放映の準備をすすめる平畑先生がいる。


発起人の一人である半田先生は、昨晩からの準備が一段落しひと息ついていた。






 
桐野

平畑先生のドキュメントビデオ、気合いが入ってますね。





 
桐野

お世話になっている江良井教授の祝賀会だから、
平畑先生も気合いが入っているだろうね。








そんな話をしていると、セッティングを完了させた平畑先生が近づいてきた。


 




  

桐野 半田先生、ドキュメントビデオどうですか?





 
桐野

素晴らしい!の一言ですよ!





 
桐野 あー、よかった。
あとは、江良井教授に
喜んでいただければいいんですが…




 
桐野

平畑先生!
教授は絶対気に入っていただけますよ!





 
桐野 そうか、桐野くんもそう思うか!
サンキュー!




 
桐野

あとは、江良井教授をお迎えするだけですね。






 

江良井教授がいらっしゃるまで、あと数分。
教授の登場を待ちわびる高揚感で医局内が包まれている。










 
桐野

それにしても…
教授って60歳になられるんですね。






 
桐野

そうです!外科医一筋35年ですよ。

 
桐野

教授が外科医になられた時には、
桐野くんはまだ生まれていませんね。






 
桐野

僕が生まれる前からかぁ…!
す、すごいですね。








 
   


ちょうどその時、医局のドアが開き江良井教授が登場した。





 

桐野 !!!!





 
桐野

教授!還暦おめでとうございます!



 
桐野

おめでとうございます!

 
桐野

おめでとうございます!





 
桐野 ありがとう…皆さん、ありがとう。





 
桐野

教授!早速なんですが、
平畑先生がつくってくださった
お祝いのドキュメントビデオがあるので、
見ていただいてもよろしいでしょうか!








 

半田先生の合図とともに医局内の電気が消される。
スクリーンには教授の還暦を祝う文字とともに、
教授が歩まれてきた外科医としての歴史が紹介される。


若い頃のイケメン写真が登場すると歓声が上がるなど、
医局内は和気あいあいとしたムードに包まれる。

ドキュメントビデオのラストには、
研修医2年目の先生方から入局宣言のサプライズ映像が流れ、
割れんばかりの拍手と声援が響いた。






 
 
桐野 平畑先生、私のためにこんな
素晴らしいドキュメントビデオを作ってくれて、
本当にありがとう!





 
桐野

いえいえ…こちらこそ、
教授に喜んでいただけて良かったです。
ありがとうございます。







 
 
次に、医局員全員からのメッセージが書かれた寄せ書きと
集合写真が入った額や赤い万年筆、赤い刺しゅうネーム入りの白衣など、
数々のプレゼントが贈られた。

一人ひとりのメッセージをじっくりと黙読する江良井教授の目が、
心なしか潤んでいるように見えた。





 
桐野 では、ここで教授より
ご挨拶をいただいてもよろしいでしょうか!




 
桐野 みなさん、忙しい中、私のために
こんな素敵な祝賀会を開いていただき、本当にありがとう!
こんなにうれしい日はないです。
 
桐野 このゲカイチで医療に携わり早35年。
素晴らしいみなさんに囲まれて仕事できることが、
私にとって何よりの宝物です。








 
江良井教授の挨拶を聞いて、半田先生も涙ぐんでいる。





 
桐野 私が外科医になった頃と比べると、
現在の医療は大きく進歩しています。
その中でも、最も変わったのは腹腔鏡の導入ではないかと思います。
 
桐野 小さい創、拡大視効果による臓器の剥離や血管処理の安全性、
出血や体液の漏出が少ない、腫瘍切除やリンパ節郭清も
より確実に行い得る、臓器をむやみに触れないので体に優しいなど、
 
桐野 腹腔鏡を手術に活用することで、
医療の可能性がとてつもなく広がりました。
 
桐野 腹腔鏡手術のように、昔では想像もつかないような技術が
導入されることで、医療は進化し続けています。








 
外科医の大先輩である教授の話に、
医局にいるすべての人がいつのまにか引き込まれていった。








 
桐野

でも、これだけ医療は進歩しても変わらないものがあります。
桐野くん、何だかわかるかね?






 
桐野

えっ!変わらないもの…ですか。







 
教授から急に名前を呼ばれ、頭の中がパニックになった。





 
桐野

た、た、探究心でしょうか…





 
桐野 そうですね!
外科医にとって探求心は欠かすことができません。
 
桐野 みなさんのような次代を担う外科医にとって
『 一つのことへの探究心とこだわり』が
とても重要になってくると私は思っています。
 
桐野 教科書を書き換えるくらい突っ込んで考え、それを実践していく。
つまり『考えて動く外科医』が、
本当の意味でのプロフェッショナルな外科医だと私は思っています。




 
桐野

(プロフェッショナルかぁ…)





 
桐野 桐野くん!
今、プロフェッシャルとして活躍する自分の姿を想像しましたね。




 
桐野

(ギクッ!)





 
桐野 あははは(笑)。
桐野くん、想像することはいいんですよ。
 
桐野 自分が将来どんな外科医になりたいか、
きちんとしたビジョンを持って日々努力する!
それが探究心の始まりなんですから。




 
桐野

はい!





 
桐野 おやおや…
いつのまにか桐野くんの話になってますね(笑)







 
半田先生の一言で、医局内は笑い声に包まれた。





 
桐野 あと、昔も今も決して変わらないものが、もう一つあります!
それは、チームワークです。
医療とくに外科はチーム医療です。
 
桐野 どんなに優れた名医がいたとしても、
外科医一人だけで手術はできません。
 
桐野 医療に携わるすべての人が同じ目標に向かうチームとして
目の前の患者さんに向かうことは、
医療がどんなに進化しても決して変わらないと思います。
 
桐野 みなさん、今日はありがとう!
みなさんのような素晴らしい方々と一緒に仕事ができて、
私は本当に幸せ者です。
 
桐野 これからも
『明るく、和をもって、一歩前進』の気持ちを持って
日々の仕事に取り組みましょう!





 
桐野

はい!









 
外科医の大先輩である江良井教授の言葉には、長年の経験から培った重みがある。
僕が教授と同じ年齢を迎える時、
僕は教授のようなプロフェッショナルになっているのだろうか…


とにかく、今はとてつもなく大きな目標である江良井教授の背中に
少しでも近づくことができるよう、しっかりとビジョンを持って
頑張るしかないのかもしれない。

僕が60歳を迎える頃の医療は、今とは比べられないくらい進化しているのだろう。
でも、今日の教授の言葉をしっかりと胸に刻み込み、
常に探究心を持って日々努力し続けていけば、
きっと教授が仰っていたプロフェッショナルになれる! …はず。


早朝の澄んだ空気を深呼吸するようなとても晴れやかな気持ちで患者さんが待つ病棟へと向かった。





 

 

 

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