鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 先進治療科学専攻 外科学講座 消化器外科学
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ゲカイチ

Vol.23

ー 両立。 ー



 
 

 朝夕の肌寒さが少しずつ柔らかくなってきて、道端や田畑に可愛らしい花々が目立ち始めた。
すっかり春である。春は、出逢いと別れが入り混じって、どうしても心が落ち着かない。
 今年の新入局員の中に可愛い娘はいるのだろうかと、そんなことばかり考えてしまう。春の花は土に咲いているとは限らないのだ。

そんなことを考えながら、自然につま先が医務室に向かう。
運が良ければ新入局員の娘に会えるかもしれない。

偶然の装い方は、随分上手くなった気がする。
さりげなく、そして爽やかに「こんにちは」と言えばいい。
第一印象で、キメるのだ。



 
 

桐野

おや、なんだか下心が背中から溢れ出てるね



 
 


ドキっとして背筋を伸ばした。
この声は、素朴さと育ちの良さを売りに不思議なモテ感を生み出すゲカイチのモテメン、
田中先生だ。(Vol16. 男と女。と仲間。参照)

 




  

桐野 あれ、田中先生じゃないですか。 ヤだなあ、下心だなんて。
そんなワケないじゃないですか。
そもそも僕は、喜例先生一筋ですから


 

バレバレの嘘と、まんざらでもない真実を織り交ぜて切り返した。



 

桐野 上手になったね、嘘と真実と織り交ぜ方が。


 



この辺りの“イヤみ”もさすが。男女お構いなく人の心をよくわかっていらっしゃる。

 

 
桐野

あら、桐野くん。相変わらず鼻の下伸ばしてどうしたの?



 
桐野

あ、喜例先生、鼻の下を伸ばしているのは、
ちょうど田中先生のモノマネをしていたからです。



 
桐野

なるほどね…よく似ているわ。



 
桐野

ちょっと。勘弁してくださいよ、
僕はもっと紳士的な鼻の下の伸ばし方ですよ。

     
 


 

この自虐的な切り返し。モテメンの余裕あるユーモア。



 

桐野

ところで、喜例先生。

今年の新入局員に女性の方は入りました?



 
桐野

ええ、4 人のうち1 人が女性。

 
桐野

先生ちょっかい出さないでくださいね。



 
桐野

まさか。なんだか女性外科医が本当に増えたなぁ…

と思っただけですよ。



 
桐野

ええ、ワークシェアリングもそうだけど、
女性医師に対しての対応や環境が
しっかりとして来た証拠かもしれないわね。

 
桐野

すでに医学部学生の3〜4割が女性ということを考えれば、
当然かもしれないけど、時代に合ったシステム構築が
すこしずつだけどされてきた証拠かもね。


 
 
 

なんという自然な話の進め方。
そして1回会話の糸口を見つけたら、畳み掛けるのが彼のスタイルだ。
 






 
桐野

外科医の仕事内容の充実には、
手術関連のクオリティのアップもあると思いますよ!

 
桐野

腹腔鏡のおかげで術野が見えやすくなったし、
皆で術野を共有することで、
下の先生や周りの人間のストレスがかなり減りましたからね。

 
桐野

それに、手術手技や術後管理の進歩で術後の合併症が少なくなりました。
おかげで手術の後の外科医のQOLはかなりアップしました。
画像診断の進歩で無理・無駄のない手術が
しやすくなったことも大きいですしね!

 
桐野

あと、術前術後の化学療法の発達などで
手術一辺倒だった癌の治療が変化したことも大きいです。
女性外科医の仕事環境もずいぶんよくなったでしょうね。



 
桐野

理由を並べると、まぁそんなところでしょうね。
とはいえ、他の業種に比べると“発展途上である”
という「現実」も忘れないで欲しいですよ。



 
桐野

ええ、たしかにそうですね。
年配の男性医師で、外科に女はいらん!なんて思っている時代錯誤な人が
100%居ないかと言えば、そうは断言出来ない気もします。



 
桐野

そうそう。年配の患者さんから
「看護師さんかと思った」なんて言われたことも、何度かあるし。



 
桐野

でも、それとは逆に、
患者さんから「女医さんで良かった」と喜ばれてる場面も
何度か見かけていますよ。



 
桐野

それは、“女医さん”じゃなくて、“喜例先生だから”
というのもあるのかもね。
桐野くん

 
     
 
 

むっ。こういう時の田中先生はちょっとウザい。
けど、女性に対してのこういう気配りは勉強になる。




 

 
桐野

ありがとう、田中先生。
あと、個人的に言わせてもらえば、
医者は仕事の配分を自分で決められる面もあるでしょ?
そう思えば、会社員よりも時間的なやりくりが自由な気もするのよね。

 
桐野

まあ、緊急の呼び出しとかも、あるんだけどさ。
そして医師を目指す女性が一番心配なのが、
家庭と仕事の両立という点だと思うけど、

 
桐野

どんな仕事であれ、 子育てと仕事の問題というのは生じてくるわ。
医者だけが特別なわけじゃない。

ところで桐野くん、このあと時間ある?



 
桐野

え?はっ、ハイ。どうしたんですか?



 
桐野

最近、近くに新しいカフェがオープンしたんだけど一緒にどう?

 
 
 
 


“春がキタ。”

この瞬間の、田中先生の驚きと嫉妬の表情を僕は忘れない。




 

桐野

もうすぐシフトが終わるから、
今日はゆっくり過ごそうと思っていたの。
ちょうど暇そうな君が来たから、たまにはどうかなと思って。

 
桐野

さっきも言ったけど、私たち女性外科医は、
誰よりも自由なのよ…なんてね!




 
桐野

…たしかにまだまだ発展途上とはいえますが、
女性の働きやすい環境は、われわれ男性外科医にとっても
職場の環境改善にもつながりますからね。

 
桐野


“外科に女性はいらん”なんてどこか泥臭い、体育会系の、
精神論的な世界から脱却出来れば…まずは僕らゲカイチからですね。

 


 
桐野

はい。ですね!…それでは田中先生。
忙しいところ、お時間頂戴して申し訳ありませんでした。

 
桐野

そろそろ持ち場へお戻りください。さ、さ、さ。




 
桐野


くっ。僕はこれから論文の原稿処理だ…

カフェか…いいですね…。

 

 
 
そう言い残して田中先生は悔しそうにその場から立ち去った。



 


 

桐野

じゃ、行きましょう桐野くん。

実はすでにカフェで人を待たせてあるの。だから急がなきゃ


 

 
 
…!?
もしかして、ゲカイチ内で誰よりも自由である女性外科医の喜例先生が誰よりも“仕事とプライベート”について感じていた…?
なんだか春から縁起がいい、と思った矢先に事態は思わぬ方向に展開していく気がする…。





 

 

 

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